週刊エコノミスト Online令和の日本経済大予測

どうなる?令和の「働き方」 正社員が幸せとは限らない=安藤至大・日本大学教授

安藤至大 日本大学教授(経済学)
安藤至大 日本大学教授(経済学)

── 日本人の働き方はどう変わったか。

■高度経済成長期から続いてきた、正社員を前提とした、何でもやる・どこへでも行く・いつまでも働く、という「日本的な働き方」が、今の時代に合わなくなってきている。現在は非正規雇用が増加しており、労働者全体の約4割を占めるようになった。

 また、正社員だから幸せに働けるかというと、必ずしもそうではない。長時間労働・配置転換・転勤があるし、大手でも会社が長期間存続するとは限らない。

── 働き方を変える要因は。

■二つある。一つは人口減少だ。すでに2008年をピークに、日本の総人口はどんどん減っている。中でも現役世代の減少が著しく、結果として人手不足になってきている。50年には2500万人も減少するという試算もある。

 もう一つは、AI(人工知能)やロボットなどの技術進歩だ。特に最近の技術進歩の速さはめざましく、結果として人間の仕事が機械に置き換わってきており、実際に失業者も出てきている。難しいのは、これらの要因で人手不足と失業者が共存してしまう点だ。

── そこで起きる問題は。

■失業者の持つスキルと、人手不足の企業が求めるスキルは、必ずしもうまくかみ合うわけではない。いわばスキルのミスマッチが起こっている。この問題に対応するために考えられているのが、「働き方改革」だ。人手不足に対しては、女性や高齢者の雇用などで働き手を増やすことや、1人当たりの生産性を上げる仕組みなどが考えられている。他には若者以外でも勉強ができるように教育関連の充実を図ることや、転職・再就職の支援などについても検討されている。

── 今後必要な取り組みは。

■長い労働人生の中で、数回の転職は当たり前になる。また、技術の進歩で、会社だけでなく仕事の内容も変えなければならない人も増えていくだろう。そのため、仕事と人を結びつける「労使のマッチング支援」を社会的に行っていかなければならない。また、若年層や失業者に対して、人材育成や教育訓練の仕組みも必要になってくる。

── 仕事選びも変わるか。

■自分で今後のキャリアを考えないといけない時代になってきている。高校の進路指導教員や大学やキャリアセンター、専門職としてのカウンセラーにアドバイスをもらうなど、長期的な視野に立った自分の働き方を相談しつつ、仕事を選んでいくことが必要になってくるだろう。

 また、定期的に自分はこんな仕事がやりたい、今までこんな仕事やってきたというキャリアの棚卸しをすることも必要だ。最近の社会変化も併せて見ていき、自分の仕事がどのくらい続きそうかなどを考えることも求められていく。

── 雇用形態はどうなるか。

■今後は正社員・非正規にかかわらず、仕事内容や勤務地などをあらかじめ契約で決める「ジョブ型」と呼ばれる雇用形態が増えていくだろう。

(安藤至大・日本大学教授(経済学))

(聞き手=岡田英/白鳥達哉・編集部)


 ■人物略歴

あんどう・むねとも

 1976年東京都生まれ。法政大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。政策研究大学院大学助教授などを経て、2018年より現職。主な著書に『ミクロ経済学の第一歩』など。43歳。

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