都市開発 五輪後も万博・カジノで長期需要も=前川健太郎
令和元年に入っても建設市場は引き続き、堅調だろう。それには三つの理由がある。
第一は「竣工ラッシュ」。東京五輪の関連施設に加え、東京都心の大型再開発案件が相次いで完成し、ゼネコン各社の業績を押し上げると見込まれるからだ。五輪に向けては主会場の新国立競技場が今年11月に竣工予定。東京都心では、大手町の三井物産本社建て替えや、虎ノ門、渋谷、四谷の再開発などが2019年度に完成する。実際、18~20年の東京都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿)のオフィス供給面積は高水準で推移。19年は、13~17年の5年間と比べて2~5割多くなる見込みで、さらに20年はここ15年で最多となる見通しだ(図1)。
数千億円規模が多数
第二は「五輪後も衰えない開発」。東京五輪後も都心の大規模再開発が続き、その発注が令和元年から見込まれるからだ。都心5区のオフィス供給は端境期の21年、22年は低水準になるものの、23年以降に再び増える見通しだ。足元の売上高をけん引する20年までのオフィス供給増を「第一の山」とすると、23年以降の「第二の山」の姿が受注を通して見え始めるのが19年と言える。
一部はすでに19年3月の段階で受注計上される可能性も高いが、虎ノ門周辺での大型再開発群を筆頭に、品川と田町の間で現在建設が進む高輪ゲートウェイ駅周辺の再開発や、渋谷や赤坂などでの再開発もスタートするだろう。八重洲や常盤橋といった東京駅周辺の再開発も控えている(図2)。
こうした大型案件は1件当たり1000億円前後、大きいものでは2000億円近い規模に及ぶとみられる。東京五輪の直接的な施設整備にかかる建設費用は約5000億円、うち最も大きい新国立競技場が約1500億円であることを考えても、これらの再開発案件の影響の大きさがうかがえる。オフィスの集約・移転ニーズは依然として旺盛な一方、再開発に伴うビルの取り壊しなどもあって供給過剰には至らず、足元のオフィス需給はタイトに推移している。
第三は「公共事業の増加」だ。第一、第二の理由は、民間建築に関するもので、恩恵が都市に集中していたのに対し、道路や橋といった土木が中心の公共事業の増加は、地方にも幅広く恩恵が見込まれる。政府は消費増税で国内需要が落ち込むのを防ぐ名目で、防災・減災、国土強靭(きょうじん)化に向けた3カ年の緊急対策を打つとしており、18~20年度の3年間で3兆円超の公共事業費の増加が予想される。
18年度は当初予算と補正予算の合計で7.6兆円。17年度の7兆円から増加し、自民党を中心とする政権に転換し大規模な財政出動がなされた12年度と同等の水準である。さらに19年度は当初予算ですでに6.9兆円の規模で、前年度から0.9兆円増えている。
増加した予算の影響ですでに19年2月の公共事業発注は増えており、今後は本格化が見込まれる。
リニア、首都高も
長期的には、25年の大阪万博も好材料だ。万博会場の施設整備のほか、地下鉄の延伸や駅ビルの建設、会場となる夢洲(ゆめしま)での追加の埋め立て工事といったインフラ整備だけでも約3000億円の規模が見込まれる。このほか、国際会議や展示会などが開ける施設の建設や、カジノを含む統合型リゾート(IR)の実現をにらんでホテル建設が進む可能性もあり、大阪での再開発計画に追い風となり得る。こうした間接的影響まで考慮すると、建設投資の規模は0.8兆~1兆円とも見ることができ、東京五輪に匹敵する規模となろう。
土木関連では公共事業以外にも、リニア中央新幹線の建設や東京外環道のトンネル工事、日本橋での首都高地下化など、民間や高速道路関連で5年以上の長期需要を見通せる案件は多い。
(前川健太郎・野村証券シニアアナリスト)