大恐慌時の金利上昇が示唆するもの=市岡繁男
1931年5月、オーストリアの大手銀行が倒産し、ドイツにも金融危機が飛び火した。英国は両国に多額の投融資を行っており、それを不安視した諸外国はポンドを金に兌換(だかん)する動きを強めたので、英国の金準備は枯渇。そこで英国は同年9月、金とポンドの交換停止と同時に公定歩合を引き上げて、ポンド防衛を図った。
基軸通貨国の利上げに各国とも追随したので、金融危機下の最も金利を上げたくない時期に全世界の金利が上昇してしまう。それが30年代の大不況を「大恐慌」にした元凶だった。
この間の金利変動には二つの特徴を見いだせる。1点目は短期金利は29年のピークを抜いていないのに、長期金利はあっさり突破したことだ(図1)。一旦、金融危機が発生すると、長期金利はそれまでの金利低下幅以上に上昇してしまうのだ。
2点目は格付けによる債券利回り格差が拡大したことだ。低格付け債の利回りは株価暴落後にじりじり上昇していたが、金本位制停止後はさらに急騰し、最悪時には国債との金利差が8%にもなった(図2)。またパニック時には低格付け債の買い手が不在となるので、こうした債券を大量に保有する金融機関の資産はさらに悪化する。
現在も低格付け債を大量に保有する金融機関は多いが、来たるべき危機時のダメージは30年代の比ではあるまい。
(市岡繁男・相場研究家)