豊田通商のアフリカ事業 車に加えて医薬・小売りも=リチャード・ビエル
豊田通商のアフリカ事業は子会社の仏CFAO(セーファーオー)が実働する形で、全54カ国で展開する。関連会社は165社に及ぶ。経済状況の異なる多数の国で、多様なビジネスモデルを展開しており、どこかの国や特定の事業の調子が悪くても、他の国や事業で補う「自主保険」がかかっている状態だ。
主な事業は、自動車、ヘルスケア、消費財、テクノロジー&エネルギーだ。このうち、自動車は売り上げの約6割を占める。日本車の販売や、日本車メーカー向けに部品供給などの現地生産支援を手がけてきた。これらの自動車は単価が高く、主に法人や政府向けだ。
今後は、個人消費者の開拓が成長のカギとなり、より求めやすい価格、具体的には1万5000ドル(約165万円)以下の自動車の投入を考えている。現在、スズキ、トヨタ自動車と共に、インドでスズキが生産する小型車をアフリカに輸入して、トヨタブランドで販売する構想を練っている。また、個人消費者が自動車を購入しやすくするため、自動車ローンの商品開発も地元銀行と進める。
個人消費者向け拡大
今年3月には南アフリカのユニトランスモーターの株式74・9%を取得することを発表した。ユニトランスは99社のディーラーを傘下に持ち、10以上のブランドを取り扱っている。これまで南アでの豊田通商の自動車ビジネスは、日本車メーカーの生産支援や、南アで生産した日本車の輸出にとどまっていたが、消費者に直接販売するビジネスに参入する。
ヘルスケアはアフリカ事業の3割を占める。西部の仏語圏国を中心に24カ国で医薬品の卸売りを展開する。欧州などから輸入した医薬品を、6000の薬局・病院に毎日配送する。仏語圏と仏語圏以外の国では、歴史的経緯から医薬品の規制が異なる。
たとえば、仏語圏では同一企業が卸売りと小売り双方をできないが、仏語圏以外では可能であるという具合だ。ならば、仏語圏以外の国では卸売り・小売り一体で運営して、収益基盤を広げるという選択肢もある。各国規制に合わせてビジネスモデルを組み立てるノウハウが必要とされる。
また、モロッコとアルジェリアでは、サノフィなど欧米製薬会社から委託を受けて、医薬品を現地生産している。市場規模が大きい医薬品ならば、輸入ではなく現地生産の方がコスト競争力がある。大手製薬会社は製造工程への要求が厳しく、CFAOの医薬品事業の知見の生かしどころといえる。
従来、商社のアフリカビジネスは、現地で農産物や貴金属、資源を調達して、輸出するモデルが中心だった。しかし、豊田通商はまったく逆で、輸入、もしくは現地生産した物を現地の顧客に売る。
このビジネスモデルは、消費者が増えるだけ、所得が増えるだけ、収益が上がる。アフリカは都市部人口、若年層人口が増えている。経済成長に伴い、個人消費者の所得も上昇が予測される。より個人消費者の嗜好(しこう)をとらえることが必要とされる。そのためには、小売り事業や自動車事業で、良質、かつ求めやすい価格での商品を投入していく。
(リチャード・ビエル、豊田通商 アフリカ本部CEO)