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週刊エコノミスト Online 挑戦者2019

近くの飲食店がお得な「社食」になる 田中勇樹・タベルテクノロジーズCEO 

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 近隣のさまざまなジャンルの飲食店を社員食堂として利用できるサービスを開始し、従業員の福利厚生として利用する企業が増えている。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長/下桐実雅子・編集部)

アプリからその日の気分で食べたいものを選べる
アプリからその日の気分で食べたいものを選べる

 契約企業が、周辺の飲食店を社員食堂として利用できる「green(グリーン)」という事業を行っています。企業の従業員は専用アプリで飲食店を選び、お店で食べたいメニューを注文、会計時にアプリを提示すると割引価格で食べられます。今は現金払いですが、キャッシュレス化を考えています。

 企業はあらかじめ、従業員1人当たりの月の利用回数、1食当たりの補助額を決めます。東京・渋谷だけで200以上の加盟店があり、全国では約7000店あります。和食、中華料理、焼き肉店などさまざまです。従業員は、周辺のいろいろなお店でお得にランチができ、飽きることがありません。

「同僚を誘いやすくなった」

 利用者にアンケートを取ったところ、「コンビニ利用が減った」「食事内容が改善した」という声があったほか、「同僚をランチに誘いやすくなった」という声もあり、従業員同士のコミュニケーションツールにもなっていると感じます。実際、退職した従業員はグリーンのサービスをあまり利用していなかったという傾向も見えてきて、従業員同士が悩みを打ち明けながら一緒に食事を取ることは想像以上に大切なのかもしれません。

 企業側には社員食堂を運営するよりもコストが安く済むメリットがあります。売り手市場で人材獲得競争も激しくなっており、営業に行くと「すぐに導入したい」と決めてくれる企業もあります。企業も従業員の健康管理を重視するようになっているので、各店舗では健康に配慮したオリジナルメニューの開発にも取り組んでいます。月額の基本料金は企業の従業員数に応じて設定しており、中小のベンチャー企業の利用が多いですが、ディー・エヌ・エー(DeNA)などの大手も導入しています。

飲食店はデータも収集

 飲食店が登録するのに費用はかかりません。一定の集客が見込めるほか、周辺の会社の人に店を知ってもらえるメリットがあります。どの年齢の人がどんなメニューを食べているのかというデータも得られるので、新メニュー開発などにつなげられます。

 最初に就職したベンチャー企業で、会社が休憩室にお弁当を置くようになったら、他の部署とのコミュニケーションが増えて、仕事もスムーズにいくようになりました。働く場の食の重要性を感じたのが、このビジネスを思いついたきっかけです。

 大学3年で居酒屋を先輩らと開業し、一時は7店舗を経営していましたが、売り上げが伸びなくなり、1年ほどで全て手放しました。飲食業界の厳しさを知っていたので、飲食店を支援したいという思いもありました。

 個人投資家らが3000万円出資してくれましたが、飲食店の開拓には苦労しました。渋谷で100店舗を達成するのに10カ月かかりました。飛び込み営業もしましたが、「面白い事業だけど、本当に(周辺企業の人が)来るの?」という反応。牛タンの店「ねぎし」の参加をきっかけに、チェーン店の加盟が広がりました。

 加盟飲食店でテークアウトもできるように準備を進めています。ランチの時間帯はどうしても店が混むため、持ち帰りも選択できるようにしたいです。


企業概要

事業内容:社員食堂サービス

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2017年10月(旧togo)

資本金:6651万9824円

従業員数:約15人


 ■人物略歴

たなか・ゆうき

 1992年熊本県生まれ。明治学院大学3年の時、飲食店7店舗を経営するが譲渡。卒業後、ベンチャー企業2社を経験し、17年10月「togo」を創業、19年2月、社員食堂サービス「green」を開始。19年9月1日「タベルテクノロジーズ」に社名変更。27歳。

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