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受難の東京モーターショー 分散開催で来場者混乱 五輪で展示会場が激減=村田晋一郎

分かれた会場を結ぶ通路に置かれた屋外展示
分かれた会場を結ぶ通路に置かれた屋外展示

 海外の主要自動車メーカーの多くが出展を見送るなど異例の開催となった第46回東京モーターショー(10月24日~11月4日)では、もう一つ来場者を落胆させる異変があった。会場が東京ビッグサイト(江東区有明)や青海展示棟(江東区青海)など複数に分かれる形となり、移動時に混乱する来場者が続出した。

 モーターショーが東京ビッグサイトで開催されるようになってから、展示スペースは最も大きな東展示棟、西展示棟が当てられてきた。二つの展示場は同じ建物内にあり、来場者の移動もスムーズだった。

 ところが今回は、東展示棟が外れ、(1)西展示棟、(2)新設の南展示棟、(3)仮設の青海展示棟、(4)トヨタ自動車のショールーム「メガウェブ」──の四つに分かれた。特に、西展示棟・南展示棟と青海展示棟およびメガウェブは約1・5キロメートル離れ、東京高速鉄道りんかい線やゆりかもめ東京臨海新交通臨海線でそれぞれ1駅。徒歩では約20分を要する。両会場を結ぶ無料シャトルバスが運行されていたが時間帯によっては長蛇の列が伸び、迷子になる来場者も出るなど大きなストレスを与えることになった。

 分散開催の原因は、来夏の東京五輪による都内の展示会場不足がある。五輪招致が決まった段階で、東京ビッグサイトの東展示棟がメディアセンターに使われることが決まり、数年前から展示会場のスペース不足が指摘されていた。

五輪招致委の無計画

 東京ビッグサイトには、五輪の度に割を食ってきた過去がある。リオデジャネイロに敗れた2016年五輪の招致活動に行き着く。16年の招致申請の段階では東京都中央卸売市場が豊洲に移転した後の築地に仮設のメディアセンターを設ける計画だった。しかし豊洲への移転が遅れたことから、特に展示業界を巻き込んだ議論もなく、東京ビッグサイトの使用に変更された。それが20年の招致計画にも引き継がれた。

 五輪のメディアセンター設置には、準備も含め1年以上の使用期間と広大なスペースが必要となり、稼働中の既存施設を使うことは、経済活動を損なう。このため、08年の北京以降、ロンドン、リオといずれも仮設で対応していた。今回の場合、安易に東京ビッグサイトに決めたこととその後の放置が混乱の元凶と言える。

 しかも今は豊洲市場が稼働し、築地は空いている。五輪の準備・運営のずさんさが、またしても浮き彫りになった。

(村田晋一郎・編集部)

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