教養・歴史書評

『オーバーツーリズム』『資本主義はいかに築かれたか』『中国 人口減少の真実』『進化のからくり』

『オーバーツーリズム』 高坂晶子著 学芸出版社 2300円

「オーバーツーリズム」とは、観光客の受け入れによって自然環境が破壊されたり、住民生活がおびやかされる事態を指す。本書では、依然として厳しい状況にある日本経済にあって、特に地方は所得向上や雇用創出など、観光がもたらす経済効果が大きいことを認め、同時にいかにダメージを受けずに済むかを追求する。国内外のオーバーツーリズムの事例と対策、さらにビッグデータを活用して観光客を分散・誘導する先進的取り組みなども紹介する。(C)

『資本主義はいかに築かれたか』 A.オスルンド著 文眞堂 4900円

  1989年6月4日。天安門事件が起きた日(イランの指導者・ホメイニ氏の死が報じられた日でもある)の記述から始まる500ページにおよぶ大著。この年の11月にはベルリンの壁が崩壊し、ここから社会主義国の体制転換が始まる。ロシア連邦をはじめポーランド、ウクライナなど各国で大統領や首相顧問を務めた著者が、市場経済の創出、国有資産の民営化の過程など、当事者ならではの視点でこの30年間の世界の資本主義化の動向を詳細に分析する。(K)

『中国 人口減少の真実』 村山宏著 日経プレミアシリーズ 920円

 中国が誇る世界最大の人口は、長く続けた「一人っ子政策」の影響もあり、間もなく減少に転じるという。日本経済新聞の古参記者が現地報道を基に、あまり知られていない中国社会の激変ぶりを紹介、その先を展望した有意なリポートだ。栄養摂取過多による肥満のまん延や人民解放軍の徴兵難などの課題が噴出し、高齢化で社会保障費は膨張の一途。人口大国の座をいずれインドに譲ることが確実な中、日本は中国とどう向き合うべきかも提言する。(W)

『進化のからくり』 千葉聡著 講談社ブルーバックス 1000円

 巻き貝研究の第一人者が雑誌に連載したコラム集。コラムと言っても語られる内容は本格的だ。巻き貝が右巻きか左巻きかを決めるたんぱく質の話や、カワニナは集団ごとに染色体の数が大きく異なるというヒトにはありえない謎に包まれた話など好奇心をそそられる。一方で、イメージとは違う地味な研究に苦闘する院生が悩んだ末、ガンジスへの旅で気持ちに整理をつけ、今は大学の教員になっている話など、研究者たちの人間模様も読ませる。(T)

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