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教養・歴史 鎌田浩毅の役に立つ地学

活発化する地震活動 「大地変動の時代」に入った日本/1

文部科学省の研究チームが公表した「東京港北部地震」の震度予想分布の一例。四角形は地下の震源断層を示す(2012年3月31日付『毎日新聞』より)
文部科学省の研究チームが公表した「東京港北部地震」の震度予想分布の一例。四角形は地下の震源断層を示す(2012年3月31日付『毎日新聞』より)

 日本全国で毎月のように震度3以上の地震が発生しているため、市民に不安が広がっている。地震が多くなったのは9年前の2011年に起きた東日本大震災からだ。気象庁が発表する地震活動のデータを見ても、昨年1年間に発生した「震度1以上」の地震は1564回と、東日本大震災以降に活発化したままだ。今回は私が専門とする地学の観点から、地震活動の原因と将来予測について分かりやすく解説しよう。

 最も懸念されるのが首都圏に暮らす約3000万人を襲う「首都直下地震」である。首都圏の地下には「プレート」と呼ばれる厚い岩板が4枚もひしめいている。東日本大震災によってプレートのあちこちにゆがみが生じ、それを解消しようと地震が頻発している。震災前に比べ内陸地震は約3倍に増えており、我が国は言わば「大地変動の時代」に入ってしまったのだ。

平安時代と類似

 現代と同じ地殻変動は1100年ほど前の平安時代にも訪れたことがある。西暦869年に東日本大震災と同じ東北沖の震源域で、貞観(じょうがん)地震という巨大地震が発生し、その後も全国で地震が頻発した。

 その9年後の878年にはマグニチュード(M)7・4の内陸直下型地震(相模・武蔵地震)が起きた。これを現代に置き換えると2011年の9年後は2020年になる。もちろん、歴史年表を単純に足し算しただけで、その通り起きるわけではないが、首都直下地震がいつ起きても不思議ではないことは確かである。

 国の中央防災会議は今後30年以内に70%という非常に高い確率で起きると予測しているが、その日時を前もって予知するのは不可能だ。ちまたには年月日を特定した地震予知ビジネスがあるが、日本地震学会は「科学的ではない」と明言している。よって、首都直下地震は不意打ちに遭うことを覚悟しなければならず、言わばロシアン・ルーレットの状況にある。

 中央防災会議は、首都直下地震が起きる場所を19カ所特定しているが、その代表は「東京湾北部地震」で、M7・3の直下型地震が起きると予想している。なおMは地震の規模を表す単位で、これは1995年に6434人の犠牲者を出した阪神・淡路大震災と同じ大きさである。

 東京湾北部地震は東京の下町付近の直下で発生し、東京23区の東部を中心に震度7の極めて激しい揺れをもたらす(図)。ちなみに、東京湾北部地震は江戸時代にも起きたことがある。幕末の1855年に安政江戸地震(M7・0)が発生し、4000人を超える犠牲者を出した。

 こうした甚大災害に対しては、事前に予知できなくても「減災」の発想で被害を最小限に抑える準備を行う必要がある。次回は事業継続計画として何を準備すべきかについて解説しよう。


 ■人物略歴

かまた・ひろき

 京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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