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教養・歴史書評

「本×ネット」の試みと課題=永江朗

「続きはウェブで」という表示をテレビCMで見かけるようになったのは10年ぐらい前からだろうか。いまや新聞や雑誌の広告でも、QRコードやサイトのアドレスを載せていないもののほうが珍しい。

 最近は書籍でも紙とネットを融合させたものが出てきている。筆者が読んだものではメアリアン・ウルフ著『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』(インターシフト、2200円)。認知神経学者による読書と脳の関係、それも紙の本と電子書籍ではどのような違いがあるかを研究した本だ。この本の注は出版社のサイトからPDFファイルをダウンロードして読むようになっている。

 デイビッド・ウォレス・ウェルズの『地球に住めなくなる日』(NHK出版、1900円)も、原注は出版社のサイトで読むようになっていて、目次にはQRコードがついている。

 長岡弘樹の『緋色(ひいろ)の残響』(双葉社、1400円)は短編連作小説集だが、同じ主人公が活躍する短編「傍聞(かたえぎ)き」をカバー袖のQRコードをスキャンして読める“プレゼント”がついている。

 注を紙の本には載せず、出版社のサイトで公開することで、紙の本は薄くできる。『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』は34ページ分、『地球に住めなくなる日』は91ページ分が、“節約”できたことになる。コストが下がれば販売価格も下がる。ネットによる紙の補完だ。こうした動きはこれからも広がるだろう。

 だが、問題なしとはいえない。まず、インターネットを使えない人は注を読めない。また、サイトに上げられた注が永久に読めるとは限らない。たとえば出版社が何らかの事情で注の公開をやめることはないのか。その本が絶版になったときはどうなるのかも不明だ。

 紙の本は、絶版になったり出版社が活動をやめてしまっても、古書店で入手できるし、図書館で読むことができる。ところが「続きはウェブで」ならぬ「注はサイトで」方式の本だと、本文は紙で読めるが注は読めないということも起こりうる。電子データを図書館に納入しておくことなども含め、今のうちに対応策を考える必要があるだろう。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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