教養・歴史書評

読み聞かせ動画の違法配信が横行=永江朗

     ネット上の朗読動画と著作権の問題がにわかに注目を浴びている。

     2月末の全国一斉休校要請を受けて、出版社がコミックや児童書などのコンテンツを無料配信したことは、かつて本欄でも触れた。これらは出版社が著作権者の了解を得た上で行ったこと。その一方、動画投稿サイトのユーチューブには、絵本の朗読(読み聞かせ)動画が大量にアップされている。こちらは著作権者の許諾を得ていないものも多い。

     児童文学の作家らで構成されている日本児童文学者協会をはじめ、多くの絵本・児童書の出版社は、無許諾の動画配信が著作権法違反であること、投稿には許諾を求めてほしいことを、自社サイトなどで呼びかけている。しかし、その思いは投稿者になかなか届かないようだ。

     読み聞かせ動画の違法配信は、新型コロナウイルスの感染拡大以前から問題になっていた。対策として、公式の動画を配信する出版社もある。例えは悪いが「良貨によって悪貨を駆逐する」ためといえよう。

     許諾に消極的な著作権者もいる。本の売れ行きに影響するということよりも、朗読の配信によって作品のイメージが固定されたり、読み間違いなどを恐れる声がある。読み聞かせは実際に目の前で本を読んでこそ、という考えの著作権者もいる。

     実は、動画投稿サイトが出現する前から、著作権無視の読み聞かせは問題になっていた。もちろんそれが家庭内で行われたり、保育士が園児たちに読むのなら問題ない。しかし、例えばイベントスペースなどで入場料を取って開催するなら、著作権者の許諾が必要になる。

     著作権者が気にするのが「同一性保持権」だ。著作物を著作者の意に反して改変してはならないという権利で、著作人格権の一つ。表現を変えてしまうことはもちろん、たとえば紙芝居に変えたり、小さな絵本では見づらいからと拡大版を自作したりするのも著作権侵害だ。

    「目的が正しいのだから、いいじゃないか」という、投稿者や読み聞かせ実践者の思いとのすれ違いは小さくない。著作権についての理解が広がらない根底には、著作権についての知識不足があるだろう。学校現場でもしっかり教える必要がある。


     この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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