「コロナ死者5万人<<<経済失速による死者20万人」イギリスでリークされた衝撃の調査結果が話題に
英国のジョンソン首相は7月17日の記者会見で、ロックダウン(都市封鎖)解除に向けた新しいロードマップ(行動計画)を示し、早ければ11月、遅くともクリスマス前にはマスク着用を義務化するものの、1メートル(改定前は2メートル)間隔のソーシャルディスタンシング(社会的距離制限)を終了し、正常に近い状態に戻す意向を示した。
懸念される新型コロナ感染第2波についても、同首相は7月19日付の英紙『サンデー・テレグラフ』紙の単独インタビューで、「全国的なロックダウンを再導入する考えはない」と強調している。しかし、地元メディアは政府に助言を与えている新型コロナウイルスの専門家の時期尚早とする反対意見を引用し、こうしたジョンソン首相の“独り善がり”な決定に批判的な論調を強めている。
ジョンソン首相はロックダウンの年内解除に固執する。テレグラフ紙は7月19日付で「英保健省や英国立統計局(ONS)、英内務省などの専門家が今年4月、新型コロナによる直接の死者数は5万人と予測する一方、経済活動の抑制によるリセッション(景気後退)や医療崩壊を防ぐための措置を原因とした治療の手遅れにより、短期間で2万5000人、中長期では18万5000人の計20万人以上が死亡するとの見通しを策定していた」ことをスクープし、年内解除に固執する背景にこうした見通しの存在があったとみられている。
英紙『ガーディアン』は7月9日付で、「英国のハイストリート(繁華街)の小売業者やレストランが経営不振により、2016年の大手百貨店BHSの経営破綻以来の約9000人もの失業者が発生する見通しだ」と警告している。
英経済の先行きは予断を許さない。イングランド銀行(BOE)は6月、4~6月期GDP(国内総生産)成長率の見通しについて、感染拡大前の19年10~12月期比でマイナス20%と、5月予想時のマイナス27%から上方修正したが、深刻な不況だった1921年4~6月期の前期比マイナス12・3%以来の落ち込みとなる見通しを示した。その後、20年7~9月期から急回復するが、20年はマイナス14%成長となり、21年はプラス15%、22年にはプラス3%の通常の成長ペースに戻ると予想している。
EU離脱も控える
英財務省が景気支援のために支出した新型コロナ危機対策費は、スナク財務相が7月8日に追加発表した300億ポンドの補正予算を含めて1880億ポンドとなるが、このほか、1230億ポンドの納税延納措置があるため、計3110億ポンドにも達する。テレグラフ紙は、「英シンクタンクIFS(財政研究所)によると、2年間で計5000億ポンドの借り入れが必要になる。この巨額な財政赤字と借り入れがパンデミック前の水準に戻るまで数十年かかる」と報じている。
また今後、第2波感染が起これば、新型コロナ関連でさらなる財政支出や、英国が今年12月末で移行期間を延長せずにEU(欧州連合)から完全離脱すれば、ブレグジット(英EU離脱)関連の追加の財政支出も予想されるため、財源確保が新たな問題となっている。英放送局BBCは7月14日、「英予算責任局は財政健全化の状態に戻すためには10年ごとに約600億ポンドの増税か、歳出削減が向こう50年間にわたって必要になる」と警告している。
(増谷栄一・国際経済ジャーナリスト)
(本誌初出 景気失速で死者「20万人」 都市封鎖解除を急ぐ英国=増谷栄一 20200825)