書店探訪の「御書印」プロジェクト=永江朗
寺院や神社で、参拝の証しに朱印を押し、寺社名や本尊名などを墨書していただく御朱印。10年ほど前からブームになったとされ、有名な寺社では御朱印帳を手にした参拝者の行列をよく見かける。いま御朱印ならぬ“御書印”が書店ファンの間で話題だ。書店で「御書印帳」にスタンプとその書店のモットーなどを書いてもらうのである。
御書印プロジェクトが始まったのは今年の3月。小学館の関連会社スタッフの発案だという。当初は全国46書店の参加だったが、北は北海道利尻島から南は沖縄県浦添市まで全国210店にまで広がっている(「ご書印プロジェクト公式サイト」より、10月5日現在)。御書印はその書店オリジナルのスタンプで、書店名とイラスト、キャッチフレーズなどを刻んだものが多い。専用の御書印帳も配布されている(数量限定で無料。なくなり次第有料に)。50店の御書印を集めると、巡了印が押される。
御書印の集め方は簡単だ。プロジェクト参加ステッカーのある書店でスタッフに声を掛け、御書印料200円を払ってスタンプを押してもらう。このとき、その書店のモットーや、好きな言葉などを書いてもらうのだが、さすがに墨書ではなくサインペンで書く書店が多い。
趣味は書店巡り、という人は多い。個性的な書店を紹介するガイドブックもいくつか出ている。一つの書店だけでなく、いろんな書店を見て回ってほしい、という声は、以前から書店関係者の間でよく聞かれていた。書店巡りのスタンプラリーなども、ずいぶん前からさまざまな機会に行われてきた。だが、多くは地域限定・期間限定のもので、参加店数も参加者もあまり広がらなかった。
御書印プロジェクトが成功した理由は何だろう。まずはネーミングも含めて御朱印集めを徹底的に模した遊び感覚。各書店のスタンプのデザイン性も高い。スタンプラリーの台紙と違って、御書印帳は保存性も高く、人びとの「集めたい」という欲求に応えている。そして、参加している書店の多くが、個性的であること。本家・御朱印集めでは、参詣者の迷惑行為などが問題になっているが、いまのところ御書印ではそうした話を聞かない。
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