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2021年度入試:東大・公立校復活のワケ/京大・逆襲私立校の秘策 日比谷、横浜翠嵐、水戸第一… /洛南、大阪星光学院、西大和学園…

サンデー毎日4月4日号・表紙
サンデー毎日4月4日号・表紙

 2021年度(21年4月入学)の東大入試は伝統公立校の復権を印象付けた。一方、公立優位が続いていた京大では私立一貫校の巻き返しが見られる。両大学の合格校の変化には、どのような要因があったのか。

 昨春の緊急事態宣言発令に伴い、21年度入試に臨む現役生は、3カ月間の休校に見舞われた。自宅学習に切り替わる期間があることで、先取り学習で6年間の学習を高校2年次までに終わらせ、3年次を受験対策に使える私立中高一貫校が有利と見られていた。

 しかし、当初の予測に反し、難関大入試で国立を除いた公立校が健闘している。東大入試も例外ではない。3月17日までに判明した合格者に対する公立校の占有率(以下同じ)は、公立校が前年の37・0%から1・8ポイントアップして38・8%。対して私立校は、55・8%から1・2ポイントダウンで54・6%となった。データ上からも公立校が健闘していることが分かる。

 実際、前年と比較して合格者が大幅に増えている公立校が多い。東大で増加数が最も大きいのは24人増で50人となった横浜翠嵐で、次に23人増で63人の日比谷。水戸第一、浦和・県立、岡崎も増加数が大きい。

公立校は、コロナ禍で課外活動が制限され、自ら学ぶ時間が増えた

 駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は「数学が易しくなり、数学が得意な生徒が多い中高一貫校のアドバンテージが生きなかった」と前置きした上で、公立校の躍進について解説する。

「トップ公立校の出身者は、自ら時間を作って学ぶことができるので、浪人すると大きく伸びる。コロナ禍で課外活動などが制限され、自ら学ぶ時間が増える中でのトップ公立校の合格者増は、勉強時間が十分にとれれば私立一貫校に負けないという、ポテンシャルの高さを証明しました」

横浜翠嵐「早期にオンライン授業、短いスパンで多くの課題」

 コロナ禍で自ら勉強しなければならない厳しい状況だったが、逆風を追い風に変えて乗り切ったようだ。学校史上最高の合格者数となった横浜翠嵐の篠塚弘康校長も生徒の頑張りを強調する。

「1、2年次に勉強の仕方が身についているので、休校になっても自ら動けたことが大きいですね。若手教員が中心になって、早い段階でオンライン授業に切り替えることができ、普段より短いスパンで多くの課題を出しましたが、ついてきてくれました。入試改革やコロナ禍で振り回されながらも、入試に向かうという強い自覚をもち、生徒が頑張った成果です」

 今春卒業する生徒は、同校の東大合格者が34人と多かった17年度入試の結果を見て入ってきた世代だ。東大進学のモチベーションが高い生徒が多かったことも、合格者増の要因になったようだ。

日比谷「オンライン上で生徒に寄り添い、昨夏の模試で中高一貫校と遜色なし」

 もちろん、コロナ禍にあって生徒のケアは不可欠だった。生徒の頑張りを教員が支えたと話すのは、日比谷の武内彰校長だ。

「オンライン上で生徒に寄り添うことにより、生徒も安心して自宅学習ができた。一部対面授業も導入し、集団で入試に臨む環境を醸成できたため、コロナ禍でも合格者が増えました」

 自ら動ける生徒に対し、教員がしっかりとフォローしたことが結果となって表れているようだ。

 さらに、トップ公立校の授業進度が早いことも、コロナ禍で東大合格実績を伸ばした大きな要因となっている。武内校長が続ける。

「日比谷には、英国数を2年生終了時までに一定レベルに仕上げる文化があります。そのため、地歴や公民に早期に取り掛かる生徒が一定数いることで、コロナ禍でも勉強が大きく遅れることはなく、昨夏の模試では、中高一貫校の生徒と遜色ありませんでした」

水戸第一「自学自習が身につき、コロナ禍が大きなマイナスにならず」

 1990年以降、過去最高だった2000年と同数の23人が合格した水戸第一も、コロナ以前の授業進度が早かった。3年生の主任教諭は、こう話す。

「入試改革に対応するため英語を先行させ、地歴公民や理科を含め、学校全体として早めの対策をしてきたことが、コロナ禍で役立ちました。普段から生徒に考えさせる授業をすることで、自学自習の習慣が身についていることもコロナ禍が大きなマイナスにならず、合格実績に結びついた要因です」

 東大合格者が増えている公立校は、同時に現役合格者も多く、横浜翠嵐が50人中44人、日比谷が63人中48人、水戸第一が23人中20人などとなっている。2年次までの早い授業進行に生徒がついていけるため、臨機応変な対応が可能だったことも、背景にあるようだ。また、文武両道の学校が多い公立校は、多くの学校行事をこなしながら勉強に取り組むため、一貫校に比べると現役合格の割合が低かった。だが、そうした定説も過去のものになるのかもしれない。

 東大発表では近畿から合格者の割合が、20年度の13・7%から15・1%に増えている。一方、表には近畿の中高一貫校も多くある。近畿全体の合格者増は、西大和学園や灘といった近畿圏の一貫校の合格者増が影響している。

西大和学園 合格者増で「東大が身近な存在に」の好循環が生まれる

 このうち、西大和学園は、かつては京大の合格実績の方が高かった学校だが、19年度に合格者数が逆転して以降、東大合格者が右肩上がりだ。21年度は23人の大幅増で同校史上最多の76人となった。同校卒業生で20年度に東大・文Ⅰに進学した学生は、こう話す。

「東大の合格者が増えることで、卒業生から東大に関するさまざまなことを聞く機会が多くなりました。このことにより、憧れの大学が身近な大学になり、東大を志望するハードルの低さを感じる生徒が増えていると感じました」

 東大の合格者が増え続けることによる好循環が、合格者増の一因となっているようだ。

 東大と対照的に、公立校優位の京大は一貫校の伸びが顕著だ。合格者に占める公立校の占有率が前年を1・4ポイント下回る57・5%となる一方、私立校は0・8ポイントアップして39・2%。20年度の東大・京大合格者が増えた学校には天王寺、北野、奈良など、近畿圏の公立トップ校が多く並んだ。しかし、21年度は洛南や大阪星光学院、東大寺学園、西大和学園など私立一貫校が多くなっている。

洛南「理科と地歴は、中1から高3まで、同じ教員が指導」

 京大の合格者数が19人増で70人となった、洛南の杉山浩之教諭に増加の理由を聞いてみた。

「理科と地歴で中1から高3まで同じ教員が持ち上がりで担当し熱心に指導することで、生徒はバランスの良い教科力を身につけました。例年と比べて志願者が多かったわけではありませんが、合格率が上がったことが、京大の合格者増の背景にあります」

 6年をかけてじっくりと育てられる一貫校のメリットを生かし、洛南は東大合格者も10人増だ。

大阪星光学院「生徒としっかりつながることができ、弱気の出願にならず」

 大阪星光学院の京大合格者数は11人増えて40人。コロナ禍でも普段通りの授業ペースを守ることで東大合格者も6人増えた。進路部長の教諭は言う。

「東大や京大など難関大を目指す生徒を対象とした補講を3月からオンラインで実施するなど、他校に比べてスピーディーなオンライン対応ができました。これにより、普段通りの授業を行えたことが結果につながりました。生徒としっかりつながれていたことから、弱気にならず例年並みの出願状況となった影響もあります」

 一貫校が合格者を伸ばす一方、公立校の合格者が伸びなかった点について、コロナ禍の影響を指摘するのは、前出の駿台・石原氏だ。

「21年度の国公立大の出願時期は、2回目の緊急事態宣言が出され、コロナ禍が激しくなっていた頃。共学の公立トップ校では、コロナ禍に対する安全志向から女子を中心に現役志向が高まり、京大から大阪大や神戸大などに志望変更する生徒が多かったのではないか。一方、浪人をいとわず出願する生徒が多い、トップ一貫校で合格者が増えたのでしょう」

 合格者が増えた学校のトップ10には、中高一貫校の西京を除き、近畿圏の公立校はない。昨年、合格者が増えた北野、天王寺、奈良といった近畿のトップ公立校はいずれも合格者が減少した。他に京大合格者が増えている公立校には、6人増で21人となった三国丘、4人増で29人の茨木、同じく4人増で10人の豊中などがある。

 公立校が躍進した東大と、一貫校が増えた京大。この状況はこの先も続くのか。コロナ禍に起きた最難関大合格校の変化の兆しは、今後も注目される。(大学通信・井沢 秀)

2021年大学入試情報
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3月23日発売の「サンデー毎日4月4日号」には、2021年度入試関連で、以下の記事も掲載しています。▽超詳報 早稲田・慶應 合格者高校別ランキング 合格者1人まで 学部別一覧表も▽全国1030高校 旧帝大、上智、東京理科、MARCH、関関同立…難関43大学合格者数▽看板学部の今 早稲田・政治経済学部、慶應義塾・経済学部、中央・法学部…

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