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教養・歴史書評

デジタル主流へ どうなる書店、取次=永江朗

 取次大手・日本出版販売(日販)の発表によると、2020年の書店店頭売上高は前年比4・3%増だったという。統計を取り始めた00年以来初めての前年超えだ(調査対象は同社と取引する約1700店)。

 とはいえ、これを“書店復活の兆し”と受け取るのは楽観的すぎるだろう。売り上げを伸ばした背景には、コロナ禍による巣ごもり需要と『鬼滅の刃』のヒットがあるからだ。

 講談社が2月19日に発表した第82期(2019年12月~20年11月)の決算によると、売上高は1449億6900万円で、前年比6・7%増。その内、紙の書籍・雑誌の売り上げが635億900万円(同1・2%減)、広告収入が55億2200万円(同6・8%減)。これに対して、電子書籍は532億円(同19・4%増)、国内版権収入は82億円(横ばい)、海外版権収入は88億円(同32・9%増)で、合計702億円(その他に不動産収入などがある)を発表した。

 電子書籍と権利ビジネスを合わせた売上額が、紙の出版物を初めて上回った。紙に代わってデジタルが主流となる時代が、いよいよ現実味を帯びてきた。

 電子書籍の売り上げの多くはマンガによるもの。『鬼滅の刃』(集英社)の陰に隠れてあまり目立たなかったが、講談社も『進撃の巨人』などが稼いだ。版権ビジネスも多くはゲーム化やアニメ化によるもので、源泉となるコンテンツもまたマンガである。集英社やKADOKAWAなど他の大手出版社も似たような傾向だ。

 電子書籍と版権ビジネスの利益は書店や取次に波及しない。そこが紙の書籍・雑誌との大きな違いだ。紙の書籍や雑誌は、それが売れれば書店も取次も出版社ももうかる。だから、かつて言われた「出版業界は三位一体」という言葉には現実感があった。以前、ある小さな書店の経営者が、「大手出版社を支えているのは、読者に本を売っているオレたちだ」と語った。いまやその「支えている」部分は半分になってしまった。デジタルが主流になる時代に、書店と取次はどう生きるのか。コロナ禍と『鬼滅の刃』で生まれたわずかな余裕をどう生かすか。まさに「災い転じて福となす」ための戦略が、書店と取次に求められている。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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