教養・歴史書評 『絶望死 労働者階級の命を奪う「病」』 ニコラス・D・クリストフ、シェリル・ウーダン著 朝日新聞出版 2200円 2021年5月14日 『絶望死 労働者階級の命を奪う「病」』 ニコラス・D・クリストフ、シェリル・ウーダン著 朝日新聞出版 2200円 世界で平均寿命が伸びるなか、米国では近年縮んでいる。死に導くのは薬物にアルコール、自殺だ。ジャーナリスト夫妻がその実態を描く。故郷の田舎町で同級生たちのその後を追うと、多くがこれらで苦しむか、既に死亡していた。著者は自己責任論に抗し、原因は社会構造だと示す。処方鎮痛薬が薬物中毒を助長し、民営刑務所への長期収監が再起を阻む。崩壊した家庭で育った子が困難に陥りやすい様は過酷で、取るべき政策として第一に教育を挙げる。(A) 前の記事 『平成金融危機 初代金融再生委員長の回顧』 柳澤伯夫著 日経BP 2750円 次の記事 中身が見られないフィルムパック 講談社文庫はなぜ踏み切ったか=永江朗 文字サイズ 小中大 印刷