教養・歴史 書評 『緑の牢獄』 黄(こう)インイク著 五月書房新社 1980円 2021年6月4日 『緑の牢獄』 黄(こう)インイク著 五月書房新社 1980円 西表島(いりおもてじま)にかつて存在した炭坑を注視すると、日本の近代の負の側面が浮かび上がる。その半数が台湾出身者だという坑夫たちは、隔絶された環境で過酷な労働に従事し、逃げ出すことのできた人は少ない。ドキュメンタリー監督の著者は、炭坑閉鎖後も島に住み続けた台湾出身の「おばあ」と、木々に埋もれた跡地を撮り、歴史を調べた。島にまつわる記録は炭坑の重層的な管理構造を反映し、語る人の立場によって記憶が異なる点を注意深く掘り下げている。(A) 前の記事 5月13~19日(ビジネス/新書) 次の記事 伝統からも、文革からも解放された自由な時代の中国詩の魅力!=辻康吾 文字サイズ 小中大 印刷