国際・政治 欧州
オーストリアがオンラインで観光再開イベント=編集部
オーストリアが観光を再開 ウェブで国際誘致イベント=稲留正英
オーストリア政府は、5月19~21日の3日間、大規模なオンライン観光イベント「オーストリア観光デー」を開催した。ワクチン接種で新型コロナの感染者数の減少が続く同国では、19日から新型コロナによるロックダウン(都市封鎖)が大幅緩和され、国内のレストラン、宿泊・レジャー施設の営業が再開された。夏シーズンの到来を前に、イベントを通じ同国の観光業を内外にアピールする。
風光明媚(めいび)な山岳や湖水地方、ハプスブルク家の王宮など豊富な観光資源を持つオーストリアは国内総生産(GDP)に占める観光業の割合が15%と高く、観光の再開は国内景気浮揚と雇用維持のため、最優先課題の一つだ。
イベントはオーストリア連邦農業・地域・観光省、オーストリア観光局、オーストリア商工会議所が主催。国内の観光事業者のほか、全世界32カ国の旅行代理店や海外メディアなど約1600団体・個人がオンライン登録し、参加した。イベントは、(1)講演会とパネルディスカッションを行う「eCampus」と、(2)デジタル商談会「atb.virtual」──の2部から構成。欧州ではロックダウンが長期間にわたったため、ハイキング、登山、自転車旅行、温泉浴などアウトドアでの旅行ニーズが高まっている。eCampusでは、この分野で豊富な観光資源を持つオーストリアの強みを、専門家らがビデオ映像も交え紹介した。商談会には約500の国際的な旅行代理店、バイヤーが参加し、地元ホテルや観光業者などと夏シーズンに向けての商談を活発に行った。
観光客に無料のコロナテスト
同国のペトラ・シュトルバ・オーストリア観光局長によると、今回のイベントでは特にドイツ、スイス、ベルギー、オランダ、チェコ、ポーランド、ハンガリーなど近隣国の観光客の取り込みを意識したという。欧州最大の経済を誇るドイツでは、オーストリアはイタリア、スペインに次ぐ人気旅行先で、例年オーストリアの外国人宿泊客の5割を占めている。ドイツは5月12日からロックダウンを緩和しているため(40~41ページに関連記事)、同イベントで最新情報を提供し、ドイツ人観光客の誘致に弾みをつけたい考えだ。
観光再開に当たっては、コロナ感染防止を最優先課題とした。連邦社会問題・健康・ケア・消費者保護省によると、同国のワクチン接種率は5月25日時点で45%。26日の感染者数も287人(欧州疾病予防管理センター)だ。さらに、欧州連合(EU)の基準にのっとり、6月から「コロナテスト済み、ワクチン接種済み、コロナ治癒済み」の3項目を証明する「グリーン証明書」を紙または、スマートフォンのアプリで導入する予定だ。観光客はレストランや文化イベントなどで、その証明書を提示すれば、面倒な手続きなく入場できる。また、希望する観光客には、無料のコロナテストも提供する。オーストリアのエリザベス・ケスティンガー観光相は、「観光客は入国だけでなく、母国への帰国もスムーズになる」と強調した。
オーストリアでは5月19日から感染発生率が十分に低い国からの入国は、コロナ陰性証明などがあれば検疫(自己隔離)なしで可能となった。対象は欧州のほとんどの国のほか、イスラエル、韓国、シンガポールなど。感染者が急増する日本は対象外となる。
(稲留正英・編集部)