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経済・企業 世界経済急回復のワナ

インドの感染爆発で途上国はコロナ対策遅延、世界経済にも打撃=西濱徹

インドの変異株は感染力が非常に強いといわれる
インドの変異株は感染力が非常に強いといわれる

リスク2 インド感染爆発 マヒしたワクチン生産国 世界への輸出途絶も=西濱徹

 インドは感染力の強い新型コロナウイルス変異株によって、感染が再拡大するとともに、医療崩壊に陥るなど、極めて厳しい状況に直面している。このため、年明け直後に急回復の動きを見せていた経済は、一転して失速する懸念が高まっている。インドは目覚ましい経済成長を遂げているものの、その失速が世界経済全体に直接的に大きな影響を与えるわけではない。(世界急回復のワナ)

 近年のインドは、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の世界有数の生産拠点であり、新型コロナ関係では、さまざまなワクチンの治験が実施されるなど、「ワクチン生産国」として存在感を示している。さらに、インドでは多くの医薬品メーカーが、ワクチン生産を実施しており、新型コロナワクチンのライセンス生産契約では、世界へのワクチン供給が前提とされるなど、世界のワクチン供給の鍵を握っているともいえる。

 しかし、国内での感染再拡大を受けて、インド政府は、国内のワクチンの製造メーカーに対し、国内供給を優先するよう求めているほか、抗ウイルス薬やその薬剤成分の輸出を当面禁止するなどの措置を取っている。

 その結果、インドからのワクチン供給を前提にした国際的なワクチン供給の枠組みである「COVAX(コバックス)ファシリティー」は、ワクチンの確保が難航する事態に直面している。仮にインドが新型コロナ感染拡大の収束に手間取り、世界へのワクチン供給が遅れれば、COVAXを通じたワクチン供給に依存する新興国は、ワクチン確保が難しくなり、感染拡大により新たな変異株が生まれるリスクが高まる。そうなれば、先進国で感染が収束したとしても、世界の人・モノの流れを以前の状態に戻すまでに相当な時間を要することになる。

渡航足止めで労働者不足

 13億人の人口を擁するインドは、世界の労働力の供給源でもある。世界の全船員に占めるインド人の船員の割合は約15%(約24万人)と高い。すでに世界の主要港では、インド出身者ないしはインドを経由した船員の入港を拒否する動きが広がっており、事態が長期化すれば、船員不足が世界の海運物流のボトルネックになることは避けられない。

 さらにアジアや中東のみならず、欧州でも多くのインド人労働者が、建設関連の仕事などに従事しており、彼らの入国が難しくなれば、各国が新型コロナ経済対策として実施している、インフラ整備などの進捗(しんちょく)の足かせとなることも予想される。インドの感染再拡大がこのまま続けば、世界経済のリスク要因となり得る。

(西濱徹・第一生命経済研究所主席エコノミスト)

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