教養・歴史書評

どうなる? 著作権者、出版社、読者の関係――改正著作権法が成立=永江朗

入手困難本に朗報か? 改正著作権法が成立=永江朗

 改正著作権法が5月26日の参院本会議で可決し、成立した。今回の改正で、国立国会図書館(NDL)がデジタル化した絶版等資料を利用者にも直に送信できるようになった。従来はNDLの承認を受けた図書館でしか閲覧できなかった。公布から1年以内に施行される。

 また各図書館は資料の複写サービスを行っているが、これをメールなどでの送信にも広げた。ただし、目的が調査研究であること、複写できるのは著作物の一部分であること、そして図書館などの設置者が権利者に補償金を支払うことが条件。こちらは補償金額など具体的な規定をつくり、公布から2年以内に施行する。

 今回の法改正に関し、文化庁の著作権審議会や出版業界内で議論の焦点の一つとなったのが「絶版その他これに準ずる理由により入手困難な資料」の定義である。

 出版業界には「絶版」と「品切れ」という用語がある。絶版は出版社がその本を出版する権利を失った状態。品切れは在庫がなくなった状態だが、重版が予定されている一時的な品切れと、いつ重版するか決まっていない状態とがある。読者にとっては、絶版でも品切れ重版未定でも、その本が入手困難であることは変わらない。しかし品切れ重版未定の本は、出版社の権利が生きている。品切れ重版未定の本も国立国会図書館がインターネット送信できるようにすることについて、出版社からは反発する声もある。

 品切れ重版未定という扱いをめぐっては、著作権者と出版社の意見が対立することもある。出版社が重版する予定もなく品切れ状態を続けることは、著作権者の目には自分の作品を“塩漬け”しているように映る。今回の法改正によって、出版社が入手困難状態を避けるために重版したり電子書籍化したりすれば、それは著作権者の利益にもつながる(もちろん出版社が絶版を選択することもあるが、その場合、著作権者は他の出版社から出版できる)。

 なお、今回の法改正ではテレビ番組のインターネット同時配信を行いやすいように著作権処理の手続きを簡素化することも盛られた。ネットとの融合はメディアのあらゆる分野で進んでいく。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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