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2021年大学入試:全国87進学校 海外名門大合格実績 広尾学園、都立国際、沖縄尚学、立命館宇治…〈サンデー毎日〉

「サンデー毎日7月25日号」表紙
「サンデー毎日7月25日号」表紙

 コロナ禍でも世界を目指し「名門大」に強い進学校は?

 コロナ禍で留学がままならず、自宅でオンライン授業を受ける留学が一般的になった。それでも高校生の海外大進学志向は止まらない。受験生にとっては、志望校に国境がなくなってきているようだ。海外大学に強い学校はどこか。

 日本の大学のグローバル化は順調に進んできた。〝国際〟や〝グローバル〟と名のつく学部は、約130大学に設置され、全大学の16%あまりになる。国際系学部の人気は高く、グローバル社会の到来を見越し、高校生の学びの意欲も高まっている。2022年4月には武蔵大が国際教養学部の新設を予定している。

 学部だけでなく、授業内容のグローバル化も進んでいる。全ての授業を英語で実施する学部もあれば、1年間の海外留学が卒業に必須としている大学もある。多くの大学でグローバル教育は、当たり前になりつつある。

 入試でも「読む」「聞く」「書く」「話す」の英語4技能を問うため、民間の英語試験の成績を入試に活用する動きも広まってきた。受験のための英語ではなく、社会を生きていくための「言語」として捉える傾向が強まっている。昨年度からは小学校の5、6年生で英語が必修になった。中学入試で英語の試験を実施する学校も増えている。

 大学のグローバル化だけではなく、高校卒業後、いきなり海外の大学に進学する高校生も増えている。こうなってきたのは、多くの学校に帰国生徒やネーティブ教員がいることで、海外の大学の情報を得ることが容易になってきたことが一因だ。中高でも修学旅行やフィールドワークで海外を訪れたり、長期休暇を活用した海外研修、留学の制度が設けられるようになってきた。

 さらに、最近では海外の学校と同じように、授業が全て英語のIB(国際バカロレア)校が公立を含め国内に設置され始めている。また、文化学園大杉並(東京)のように、日本の高校とカナダの高校、両方の卒業資格を手に入れられるダブルディプロマ制を取る学校も出てきた。カナダの高校卒だと海外大へ進学しやすい。このようにグローバル教育は、大学だけでなく、高校、中学などでも行われるようになってきた。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、グローバル化が一時的に頓挫してしまっている。昨年は留学できず、語学研修にも出かけられなかった。留学といっても、家でオンラインで海外の授業を受けることになった。

 このコロナ禍の影響は大きく、私立大で見ると、国際系学部は19年に前年より15・7%も志願者が増える人気ぶりだった。ところが、20年は志願者が19年の92%と前年を大きく下回り、さらに21年は20年の81・9%まで減ってしまった。コロナの影響をもっとも受けた学部系統だ。

 ところで、このコロナの感染拡大は、世界の大学ランキングに影響を与えたのだろうか。左ページの表を見てほしい。英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)が発表した21年版のランキングで、トップは前年と変わらずオックスフォード大、2位が前年の4位から上がったスタンフォード大、3位が前年の7位から上がったハーバード大だった。トップ10は全てイギリスとアメリカの大学で、コロナ禍の影響は受けていない。やはり世界的な流行のため、どの大学も影響は等しいということだろう。

 アジアのランクを見ると、トップは全体で20位の中国の清華大、次いで北京大、シンガポール国立大、東大の順だった。東大は世界で36位、続く日本の大学は54位の京大だった。この2校が日本のトップ2ということになる。

 地方からハーバード合格ができる時代に

 教育ジャーナリストの小林哲夫さんがこう分析する。

「この3年間、東大は42位、36位、今回は前年と変わらず36位でした。京大は65位、65位、54位と今回はアップしました。やはり留学生が少ないこと、外国人教員が少ない、論文数が少ないなどの点が弱くなっています。それに比べ、アジアトップの清華大は、どの項目も東大より高く、産学連携に力を入れていることが評価されています」

 こういった大学ランキングの影響もあり、日本の大学より順位が上の海外大に進学という選択肢も現実的になってきている。68㌻から始まる「全国87進学校 海外名門大合格実績」を見てほしい。これは本誌と大学通信が各校にアンケートを行い、海外の名門大と日本の東大、京大、早稲田大、慶應義塾大の合格状況を、一覧で見られるようにしたものだ。

 海外大合格者数トップは、218人の広尾学園(東京)、続いて117人の国際(東京)▽78人の沖縄尚学(沖縄)▽48人の立命館宇治(京都)▽43人のN(沖縄)▽36人の学芸大付国際中教(東京)――の順だった。広尾学園は昨年の76人から3倍近くに増えている。広尾学園インターナショナルコースの統括長がこう話す。

「生徒はコロナ禍の以前から海外大学を志望していました。中学時代からカレッジフェアを開催し、海外から200校ほど集まってもらって説明会を開いていましたから、自然な流れで志望していたんだと思います。ただ、コロナ禍で昨年はそれもできず、生徒はオンラインで100校以上の海外の大学の説明会に参加していましたが、例年より日本の大学と併願する生徒が多くなりました。コロナにかかわらず、海外の大学は受けておかないと、進学する機会を失うから受けたんだと思います。海外の大学を1校しか受けない生徒もいましたが、全体としては34~35人が受けました」

 今回のアンケートは合格実績だけでなく、いくつかの項目についても各校に聞いている。それを集計すると、「最初に生徒の相談を受ける時期は」の問いへの回答は、高1以前=32%▽高2前半(9月まで)=30%▽高2後半(10月以降)=17%▽高3=20%――だった。やはり早い時期から海外大進学を考えている生徒が多い。

 また「海外進学の相談に対応するのは」の質問には、トップが担任で、次いで進路指導、英語の先生、専門部署の順だった。さらに、海外進学情報の入手先については、「民間の情報サービス」がトップで、次いで「他の教職員」と「公的機関」が並び、その後に「インターネット」が続いた。この「他の教職員」にはネーティブ教員が含まれている。

 高校でも、海外大進学を希望する生徒の要望に応える体制整備が進んでいる。「今後、海外大学に進学する生徒数は」の問いに▽今より増える=41%▽わからない=30%▽今と変わらない=23%――だった。今後もどのような要因があろうとも、海外大進学は続いていきそうだ。

 ただ、学費の高さが気になるところだ。広尾学園の植松さんは「大学にもよりますが学費は700万~800万円かかり、これには寮費と賄いがついている場合もありますが、それ以外に生活費がかかります。合格を勝ち取っても奨学金がどれぐらいもらえるのかも重要です」と言う。

 前出の小林さんは「今年もニュースになっていましたが、地方の公立校からハーバード大に行ける時代になってきました。アプリを使えば英語の勉強は可能ですし、ネット上に情報もたくさんあります。高い学費がネックでしたが、企業などが奨学金を出す制度も少しずつですが増えており、今後も海外大に進学する人は増えていきそうです」と言う。

 かつての「日本の有名大学に合格しないから海外の大学に」という考えはなくなってきている。「英語で医学を学びたい」と考える受験生も出てきている。英語を学ぶのではなく、英語で学ぶ時代が来たといえそうだ。

 7月13日発売の「サンデー毎日7月25日号」には「全国87進学校 海外名門大合格実績」の表も掲載しています。

 ほかにも「ワクチン政変『菅首相再起できず』」「変異株に負けない食事術・前編 重症化防ぐ『昔ながらの和食』」「本誌独占!ノーベル賞学者・大村智博士が激白45分『予防はワクチン 治療はイベルメクチン』」などの記事も掲載しています。

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