本誌独占!ノーベル賞学者・大村智博士が激白45分「予防はワクチン 治療はイベルメクチン」〈サンデー毎日〉
コロナ患者への治験開始へ
ノーベル賞学者・大村智博士が開発したイベルメクチンは、アフリカの数多の人々を病から救ってきた。その薬が、新型コロナ治療薬として劇的な効果を挙げたとの報告が、海外で相次ぐ。日本でも本格的に始まる治験。これまで沈黙を守ってきた大村氏が現在の心境を本誌に激白した。
「イベルメクチンの新型コロナ患者への治験が、いよいよ日本でも本格的に始動することになりました。何より重要なのは、科学的根拠やデータを提示すること。その結果により、皆さんに新型コロナの治療薬となり得るかどうか、判断してもらえればと思います」
毅然(きぜん)とそう語るのは、2015年に栄誉あるノーベル生理学・医学賞に輝いた、大村智(さとし)博士である。
新型コロナウイルス感染症の救世主となるか。今、そう熱く注視される薬がある。それが、イベルメクチンだ。イベルメクチンは、大村博士が米製薬会社のメルク社とともに開発した抗寄生虫薬である。
この薬は数多(あまた)の人々を病から解放し、死の危機から救ってきた。熱帯地方のブユに刺されると、回旋糸状虫が人に寄生する。やがて寄生虫が体内で増殖すればオンコセルカ症を発症し、失明する危険がある。足がまるで象のように大きく膨れ上がるリンパ系フィラリア症(象皮病)にも罹患(りかん)する。
1987年から使用されてきたイベルメクチンは、これらの重篤な病気の治療における特効薬となった。アフリカなどで病に苦しむ多くの人々を救った薬を開発した功績により、大村博士はノーベル賞を受賞したのである。
そのイベルメクチンが、新型コロナの感染者数も、死亡者数も劇的に減らす効果がある――そんな臨床試験の結果が実は今、世界で続々と発表されている。
そして日本でも7月1日、医薬品メーカーの興和(名古屋市)が北里大、愛知医科大、東京都医師会との協力のもと臨床試験を行うとのニュースが報じられた。それを機に、大村博士が現在の心境を、本誌に語ってくれた。今まで自ら話すと影響力が大きすぎるなどの懸念から取材を避けてきたと思われる大村博士が、本誌に激白すること45分――。
「イベルメクチンは本来は、抗寄生虫薬です。それが新型コロナの治療薬として承認されるには、臨床試験を行う必要があります。そのため北里大では花木秀明教授たちが中心となり、特別編成のチームを作って昨年から治験を行ってきたのです。若い研究者たちはみな真面目で、正義感に溢(あふ)れています。でも治験を専門的にやってきたわけではないので人手が足りず、募金を受けていたものの資金も不足状態に陥りました。
そこで以前からともに仕事をしていた興和に相談したところ、新型コロナ感染症の治療に少しでも貢献したい、国民の命を守ることが製薬会社の使命だと、引き受けてくれたのです」
大村博士は、経緯をそう説明する。この臨床試験は年内に終わる予定であり、その後は厚生労働省に承認申請をし、順調にいけば1年ほどで認可が下りることになる。実は他国では、すでに途上国を中心に約80件もの臨床試験が報告されている。
初期治療で76%の症状が改善
米国の救急救命医学領域の医師らによって結成されたFLCCCは、世界各国のイベルメクチンの臨床試験を調査・解析する団体だ。その結果「イベルメクチンは新型コロナに有効」として使用を推奨してきた。
FLCCCが多くの臨床試験をメタ解析(※)したところ、イベルメクチンを予防として投与すれば85%、初期治療で76%、後期治療で46%に効果があった。致死率の改善も70%に上ったのだ(6月21日現在)。
またイギリスの医師や研究者などで構成されるBIRDも、イベルメクチンの使用により新型コロナに感染するリスクが90%以上、死亡率は68~91%減少すると結論づけている。
こういった報告を受けて、まずイベルメクチンは発展途上国から使用が始まった。パンデミックを何とか収束させたいとの一心で、政府や自治体が他の治療薬と比べ格段に薬価の安いイベルメクチンを投与したのだ。
「今まで約25カ国の政府や自治体が使用を認めて投与した後、多くの人の症状が改善したとの結果がはっきり数字として出ています。今年の4月頃から感染爆発が起きたインドでは、いくつかの州政府は独自に治療基準を改訂し、イベルメクチンの使用を始めて効果を挙げました。その他にもチェコやスロバキア、ペルーやメキシコなども治療を採用しています」(大村氏)
現在、イベルメクチンの作用機序には大きく三つあると考えられる。①ウイルスの表面にあるスパイクタンパクにイベルメクチンが結合して体内にあるACE2レセプターとの結合を阻害し、細胞に侵入するのを防ぐ②ウイルスは一本の鎖状のタンパク質を形成するが、メインプロテアーゼがそれを阻害。またウイルスタンパクを核内に運ぶインポーチンなどに結合して、ウイルスの増殖を防ぐ③免役調整をして炎症、免疫の暴走によるサイトカインストームを抑え、重症化を防ぐ。そのうえ、副作用が少ないのも大きな魅力だ。
「イベルメクチンは、今までアフリカなどを中心に37億回も使われてきましたが、副作用はほとんど報告されていません。なぜ副作用が起きないかといえば、服用量が少ないからです。一般的な抗生物質は、1回約200㍉㌘の錠剤をたとえば朝と夜の1日2回、数日にわたり飲むよう指示されます。現在、イベルメクチンは疥癬(かいせん)の治療にも使われていますが、標準体形の成人なら12㍉㌘をたった1度飲めばいいだけなのです。どんな薬でも、量を多く飲めば肝臓などの負担になり、副作用が出やすくなります」
イベルメクチンは、現在日本でも、すでに一部の病院で新型コロナの治療薬として使われているのを知っているだろうか。2020年5月、厚労省の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き(第2版)」には、「新型コロナへの適応外使用を認める」とある。ただし適応外使用だと、副作用が出た時に国の救済対象にならない可能性がある。
だがそれも、菅義偉首相や厚労省がこの非常事態を乗り切るために「イベルメクチンを新型コロナ治療薬として認める」と特例承認すれば、国民は補償のもと使用可能となるのだ。
「イベルメクチンを新型コロナの治療に使える事実を知らない医師も多いと聞きました。特例承認を望む声もありますが、日本政府はまったく動く気配はない。日本の政府は、たとえ石橋を叩(たた)いても渡るかどうかを考え続けるような体質ですから、決断はできないでしょうね。本来であれば日本が世界に先駆けて実施し、突破口になってもいいはずなんです。でも、日本はそういう政治はできない。
政府は、ワクチン行政も完全に失敗しましたよね。ワクチンを準備するというのは国家としては安全保障上の問題であって、兵器や戦闘機を用意しておくのと同じなんですよ。いざという時にワクチンを自国で、短時間で作れる態勢を整えておくべきだったのに、それもやりませんでした。
そのうえオリンピックに向けて、国民にただ自宅待機だけを求める。国民を家に閉じ込めるだけの政治は、無策としかいいようがありません。本来の政治の役割とは、何が国民のためになるかを判断することなのではないでしょうか」
政府は東京都に4回目の緊急事態宣言を来月22日まで出した。東京オリンピックの開催と引き換えに、「不要不急の外出をするな」と、そう求め続けている。
「証拠が不確か」のWHOに反論
一方で、イベルメクチンが新型コロナ感染症に対して効果がないと主張する人たちもいる。その理由の一つは、世界保健機関(WHO)がイベルメクチンについて否定的な立場を貫いていることだ。WHOは「証拠が非常に不確実」「いかなる患者にも使用すべきではない」との声明を発表している。製薬会社や大学による数千人単位の大規模な臨床試験がまだ実施されていないからだという。しかし大村博士は冷静にこう答える。
「現在、公表されている治験の結果は、患者にイベルメクチンを投与した医療現場の臨床をもとにしたものがほとんどです。だから、一つ一つの治験の対象人数が少ないのは確かです。でも、それを全体として見れば、すでに相当数の人に治験が行われていることになる。
そのうえ有能かつ経験豊富なFLCCCやBIRDの医師たちが、臨床試験を科学的にメタ解析した結果、効果があると明言したのです。それでもWHOは認めない、というわけです」
そこにはWHOの〝汚染体質〟が絡んでいると指摘する声もある。
「NYタイムズの看板ジャーナリストに、マイケル・カプーゾという人がいます。ピュリツァー賞候補に何度もなった優秀な記者ですが、その記事にはこうあります。〝WHOは大手の製薬会社などから寄付をもらっている。だからWHOは公立ではなく私設と言い換えたほうがいい〟と。
大手製薬会社は今、イベルメクチンに代わる治療薬を必死に開発しています。それで特許を取り、利益を上げようとしているからイベルメクチンの有効性を認めるわけにはいかない。彼の記事は様々なデータを丹念に解読して書かれていて、これぞジャーナリズムの真髄だと、そう感じました。
そのWHOは5月、インド弁護士会から警告書を通知されています。WHOの指針に従い、インドでイベルメクチンの投与をしなかった州の感染者が、劇的に増えたからです」
イベルメクチンの有効性についての情報を故意に抑圧し、使用を拒否させるような情報を流布する組織的活動をしているとして、インド弁護士会はWHOに警告。刑事訴追も辞さないとの強いメッセージを発している。
「そのWHOについての私の感想は、板挟みになって気の毒だな、という感じでしょうか。私は今まで研究者として生きる中で明るい光の部分しか見てこなかった。でも今回、世の中には影もまた存在するのだということを、この記事を読んで初めて知りました」
そして言葉をこう続けた。
「イベルメクチンに関してはもう科学の問題ではなく、政治の問題になってしまっているのです」
真理は必ずやいつか明らかになる
現在、懸念されるのはイベルメクチンが効くとSNSなどで情報を得た人が海外サイトで個人輸入し、何としても手に入れようとしたり、勝手に服用しようとすることだ。それも「政府から正しい情報が国民にもたらされない、マスコミから正しい報道がされないことがこのような状況を生んでいる」と大村博士は嘆く。
「私は別にイベルメクチンで商売をしたいわけでも、やみくもに早く日本で治験を終えて承認してほしいと言っているわけでもありません。ただ、何が本当に正しいかを見極めてほしいと願っているだけなのです」
さらに今後の新型コロナ感染症対策は、ワクチンと治療薬の両方を、国民にいかに適切に、必要な分だけ投与できるかが鍵だと話す。
「予防はワクチン、そして感染したらイベルメクチンなどの治療薬を使う。その両輪があって、初めてこの感染症に立ち向かうことができるのです」
最後に大村博士は、「至誠天に通ず」という自身が最も好きだという中国の儒学者・孟子の言葉とともに、話をこう締めくくった。
「『至誠天に通ず』の意味は、真理は必ずや風説に耐え得る、真理がやがて明らかになり、うそは負けるということ。その信念を持ちながら私はサイエンティストの立場から、今回のことも見守りたいと思っています。
私は医師ではないから、現場で新型コロナの治療もできない。そういう意味では、ただのしがない化学者です。でも研究により人々の役に立ちたいとの一心で522種の新規天然物を見つけ、うち28種が医薬や動物薬、農薬や研究用試験として市販されました。イベルメクチンの元であるアベルメクチンもその一つです。
やはり私の好きな言葉に、『一期一会』もあります。研究所の若い化学者たちは努力家が多く、今回の治験でも本当に根気よく頑張ってくれている。何事も懸命にやれば、いつかは必ず実るもの。私のような一介の化学者が現在のような評価をいただけたのも、すべては彼らの尽力のお陰なのです。
スウェーデンのストックホルムで行われたノーベル賞授賞式の時も、私は自分のスライドの最後にこの『一期一会』の言葉を出しました。人と人の繋(つな)がりを大切にし、他人から知恵をいただき、そしてともに協力していく。これからも、研究者としてその姿勢を貫き続けていきたいと思います」
次週は多様な意見を取り入れつつ、イベルメクチンへの考察をより深めたい。(本誌・鳥海美奈子)
※複数の研究結果を統合してより高い見地から分析する、またそのための手法や統計解析のこと。
おおむら・さとし
化学者。北里大学特別栄誉教授。1935年7月12日、山梨県韮崎市生まれ。微生物の生産する天然有機化合物の研究が専門。発掘した化合物の一つイベルメクチンはオンコセルカ症やフィラリアなど寄生虫感染症を予防・治療する特効薬となった。その業績が評価され、2015年、ノーベル生理学・医学賞を受賞