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教養・歴史 書評

住民に吉、地元書店に凶? 「LAWSON マチの本屋さん」オープン=永江朗"

ローソンが「マチの本屋さん」開店=永江朗

 ローソンが書店併設型コンビニの新ブランド「ローソン マチの本屋さん」を立ち上げ、6月3日、第1号店を埼玉県狭山市にオープンした。「マチの本屋さん」は出版取次大手の日本出版販売との連携。通常のコンビニの扱い商品に加え、書籍・雑誌を多く扱う。とりわけ書籍に力を入れているのが特徴で、アイテム数は小規模書店並みである。

 1970年代、全国に広がるコンビニで、雑誌は主力商品の一つだった。毎日のように最新号が出て常に商品が入れ替わり、立ち読みも含めて集客力があった。コンビニもあえて雑誌の陳列什器(じゅうき)を外から見える位置に置いた。立ち読み客がいることによって、強盗を未然に防ぐ意味もある、とまことしやかにささやかれたりもした。90年代には書店よりもコンビニでの売り上げのほうが多い雑誌や文庫も珍しくなかった。

 しかし、21世紀に入ってインターネットとスマートフォンの時代になると雑誌は全般的に低迷。休刊やネットへの転換が相次ぐようになった。コンビニ界でも以前ほどは雑誌を重視しない店舗が増えてきた。

 そんな中、ローソンは文庫だけでなく「四六判」と呼ばれる通常サイズの単行本やビジネス書にも対応した書籍専用什器を2014年から導入。書籍に力を入れた店舗を増やし、21年5月末で約5000店が書籍専用什器を設置。また同年からは書店を併設した店舗を展開している。新型コロナウイルスの感染拡大によるいわゆる“巣ごもり需要”の増加は、こうしたローソン各店における書籍の売り上げにもプラスに影響した。

 新刊書店の店舗数は01年の2万1000店から約1万店へと半減した。近くに書店がない地域が増える中、「マチの本屋さん」を歓迎する声は読者と出版社、双方から聞こえる。

 もっとも、20年間で書店が半減した理由は人口変動や社会のデジタル化などさまざまあるが、コンビニが雑誌の売り上げを“奪った”こともその一つ。今後「マチの本屋さん」の出店動向によっては、従来の小規模書店、本来の“まちの本屋”がさらに苦境に陥ることも杞憂(きゆう)とは言えないだろう。セブン─イレブンやファミリーマートが追随するのかも気になるところだ。


 この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。

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