投資・運用投資の達人に聞く アフターコロナの資産形成術

投資の達人に聞く④野村AM「情報エレクトロニクスファンド」(上)運用成績で米国株を上回る「最強アクティブファンド」の意外な生い立ちとは

    ファンドマネージャーの福田泰之さんは、運用19年、企業調査7年のベテランだ
    ファンドマネージャーの福田泰之さんは、運用19年、企業調査7年のベテランだ

     米国株が最高値を更新する中、個人投資家の間で、米国株投資が人気化しているが、実は、日本株を投資対象としながらも、米国株を上回る運用成績を出しているファンドがある。その代表例の一つが、野村アセットマネジメントの運用する「情報エレクトロニクスファンド」だ。

    設定37年の長寿ファンド

     設定は1984年2月22日で運用期間は37年に及ぶ。QUICK資産運用研究所によれば、公募株式投信の平均設定期間は約7・5年だから、日本株ファンドとしては異例の長寿だ。

     一方で、今年3月末を基準とした過去10年間の平均利回りは年率19%だ。運用期間20年以上の国内株式アクティブファンドは139本あるが、投信評価会社モーニングスターによると「国内大型グロース」のカテゴリー内で、同ファンドは、1年、3年、5年、10年といずれの期間でも利回りはトップだった。

    S&P500、ナスダックを上回る運用成績

     2011年3月から2021年3月までの過去10年間の上昇率は、6・23倍。東証株価指数(TOPIX)の2・25倍はもとより、「世界最強のインデックスファンド」と言われる米S&P500種の4倍やナスダック総合指数の5・85倍をも上回っている。

     2020年年間の運用利回りは年37%と「国内大型グロース」カテゴリーの平均である年18%を上回る好成績を残しており、モーニングスターの選定する「最優秀ファンド賞」を19年、20年の2年連続で受賞した。

     このファンドの運用を2011年4月から担当しているのが、福田泰之・運用部株式グループシニア・ポートフォリオマネージャー(48歳)だ。

    兄弟ファンドの一本としてスタート

     運用の秘密を聞きたいと、福田さんに取材を申し込んだが、最初に帰ってきた答えは、このファンドの意外な生い立ちだった。今でこそ、優秀ファンドとして表彰されるまでになったが、過去37年間の運用成績は決してバラ色一色だったわけではないという。

     情報エレクトロニクスファンドは、1984年に「レインボーファンド」というファンドファミリーの中の一本として設定された。兄弟ファンドとして「市況産業ファンド」「公共株ファンド」「マネープールファンド」が同時に設定され、投資家はそのファンド間を低コストで乗り換えられることに特徴があった。バブル経済による右肩上がりの株式市況を反映し、レインボーファンドは、87年に「ファイナンシャル・情報株ファンド」、90年「地球環境ファンド」、91年に「株主還元成長株ファンド」とラインアップを増やしていく。

    「再生請負人」の福田さんは、まずは基準価額1万円の回復を目指した
    「再生請負人」の福田さんは、まずは基準価額1万円の回復を目指した

    「再生請負人」として福田さんに白羽の矢

     しかし、1990年のバブル経済の崩壊、2000年のITバブルの崩壊、2008年のリーマン・ショックの三つの経済ショックにより、各ファンドの運用成績は低迷し、純資産額も減少。情報エレクトロニクスファンド以外の6ファンドは、2014年2月に償還された。だが、情報エレクトロニクスファンドは、ITバブル時に純資産が1000億円を超え、規模が大きかったうえ、再生の見込みもあると経営陣が判断、その「再生請負人」として、白羽の矢が立ったのが福田さんだった。

    企業調査7年、運用19年のベテラン

     福田さんは1995年4月に野村証券投資信託委託(現野村アセットマネジメント)に入社。造船・重機、運輸のアナリストとしてキャリアをスタートした。2年後の97年12月に国内投信チームで、投信の運用を開始。2000年5月からは、英ロンドンの現地法人で欧米のIT企業の調査も担当した。2003年12月の帰国後は自動車の調査・分析に携わったのち、04年6月からは、一貫してファンドの運用を行っている。企業調査の経験7年、運用の経験19年のベテランファンドマネージャーだ。

    基準価額は一時3800円に

     2011年4月に担当になった時は、情報エレクトロニクスファンドは厳しい状況にあった。基準価額は5000円で設定時の1万円を大きく割り込んでいた。翌2012年の欧州通貨危機の影響で、一時、3800円まで下がった。

     「ITバブルの時は1000億円くらいのお金が集まったが、その後のバブル崩壊で、多くの顧客が損失を被る形になり、運用担当者も何人も変わった。私のパフォーマンスが良くても、お客さんにとって、ロスはロス。だから、私の最初の考えは、『何とか早く1万円の基準価格を回復させたい』ということだった」。

    ガンホー・オンライン・エンターテインメントとあいHDの発掘が、基準価額の回復に大きく寄与した(福田泰之さん)
    ガンホー・オンライン・エンターテインメントとあいHDの発掘が、基準価額の回復に大きく寄与した(福田泰之さん)

    ガンホーの発掘

     それでは、基準価額の回復に、福田さんがやったことは何だったのか。「基本は大型株を中心に、とにかく魅力のある銘柄を見つけて思い切って投資すること」だったという。

     福田さんは、2011年から13年のスマートフォンの普及期において、スマホのコンテンツとしてゲームを提供する「ガンホー・オンライン・エンターテインメント」に注目した。会社を直接訪問し、主力事業をパソコンのオンラインゲームから、スマホゲームにシフトする戦略を評価し、高い利益成長の可能性がある銘柄として、情報エレクトロニクスファンドに組み入れた。同社の「パズル&ドラゴンズ」が大ヒットしたことにより、株価は一時、組み入れ時の50倍以上に上昇し、ファンドの運用成績向上に大きく貢献した。

    あいHDの上昇で、「反攻の狼煙」

     基準価額の回復に寄与したもう一つの銘柄が、監視カメラを手掛ける「あい ホールディングスだ」だ。マンションやオフィスビルにおけるセキュリティーへのニーズが高まる中、同社は、いち早くデジタル方式の監視カメラを採用。高画質化によるシェアアップを目指していた。福田さんは、会社のこの経営戦略を評価し、ファンドへの組み入れを決定。その後の利益の拡大を受け、株価は一時、組み入れ時の6倍以上に上昇した。

     これらの2銘柄が大きな原動力となり、2014年7月にまずは、念願の基準価額1万円の回復を達成した。

     ここから、福田さんと情報エレクトロニクスファンドの快進撃が始まる。

    (稲留正英・編集部)

    (続く)

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