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教養・歴史書評

『日本政治 コロナ敗戦の研究』 評者・服部茂幸

著者 御厨貴(東京大学先端科学技術研究センターフェロー)芹川洋一(日本経済新聞論説フェロー) 日本経済新聞出版 1760円

強権政治の行き詰まりを検証 コロナに無策で倒れる内閣

 新型コロナウイルスが猛威を振るっている。ウイルスは1強と言われた安倍晋三内閣も、その後継者の菅義偉内閣も打倒した。日本には危機時に身を捨ててでも立ち向かう政治家がいないと本書は書く。安倍氏も菅氏も内閣が倒れるまで何もする気がないように見えたことは、評者が理解に苦しむことである。

 著者の二人は菅という政治家は無思想、無イデオロギーのリアリストだと言う。現場の人の知恵を大事にするとも言う。そして虫の目があるとも言うが、であれば、コロナという具体的な問題の処理がうまくできたはずである。リアリストならば、対策をやっているふりをしたはずである。逆に「コロナに勝った証しとして」オリンピックを開くというような空虚な発言をしないはずである。菅氏が具体的な問題に強いリアリストというのは本当だろうか。

 著者たちの安倍氏の評価は比較的高い。安倍政権は半年、1年単位で物事を処理するのがうまいとも言う。しかし、本書にあるように、実際は「やってる感」を出すのがうまいだけだった。経済もデフレ脱却は進まず、1人当たり実質GDPは韓国に抜かれている(台湾にはもっと昔に抜かれた)。それでも、これも本書にあるように国民、特に若者の政治に対する期待が低いなどの理由で安泰だった。ところがコロナ問題では安倍氏の「やってる感」の政治が通用せず、一気に行き詰まったというのが実際だと評者は考えている。

 著者たちは、政治家たちを競争させるために2大政党制が必要だと言う。ここで選挙区制度を考える必要があろう。前回の衆議院選挙の比例代表では自民党の得票は全体の3分の1であり、公明党の分をあわせても半分に届かない。これで与党が圧勝できるのは、小選挙区制があるからだ。安倍1強は選挙制度が支えていたのである。

 日本とは逆に感染症対策がうまくいったのが、デジタル監視国家の中国、ベトナムと準戦時国家の台湾、韓国だと言う。そこから、自由と秩序のバランスを取ることが大事だと指摘する。実際には権威主義国家、準戦時国家の全てでうまく対処できたわけではない。これからの日本に危惧されることは、政治の強権によって自由が奪われ、無能によって秩序が破壊されることだろう。

 古代の東アジアでは疫病は為政者の不徳のためとされてきた。もちろん、現代人はこれには賛同しない。しかし、コロナの蔓延(まんえん)が日本の政治や社会のシステムの病理をあらわにしているのは確かである。

(服部茂幸・同志社大学教授)


 御厨貴(みくりや・たかし) 1951年生まれ。政治史、オーラルヒストリーが専門。著書に『政策の総合と権力』など。

 芹川洋一(せりかわ・よういち) 1950年生まれ。BSテレ東「NIKKEI日曜サロン」キャスターなども務める。

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