投資・運用投資の達人に聞く アフターコロナの資産形成術

投資の達人に聞く㉓日興AM「ミュータント」(中)「入居率高い投資用アパート」「高成長の中古車販売」「障がい者就労支援」「中国出身社長IT会社」のオーナー系4社とは

    日興アセットマネジメントの北原淳平さんは、オーナー企業を自分の目で確かめることの重要さを強調する (同社提供)
    日興アセットマネジメントの北原淳平さんは、オーナー企業を自分の目で確かめることの重要さを強調する (同社提供)

     日興アセットマネジメントが運用する日本株アクティブ投信「ミュータント」は、オーナー企業の株式をファンド全体の5~7割で組み入れている。独自要因で利益成長が期待できる企業の中でも、なぜ、オーナー企業に注目するのか。

    オーナー企業の高い収益性に注目

     ファンドマネージャーの北原淳平さんは、「一つは、国内外の様々な論文で、オーナー企業の利益や株価の成長は、株価指数などの市場平均に比べて、良いという研究結果が出ている」ことを挙げる。実際、TOPIX採用企業とオーナー企業(経営陣が10%以上の株式を所有する企業)の営業利益の水準を2007年度を100として比較すると、2018年度ではTOPIX企業の115に対しオーナー企業は155、19年度では、98に対し140とオーナー企業が大きく上回っている。

    オーナー企業はTOPIX採用企業より営業利益の水準が高い (出所)日興アセットマネジメント
    オーナー企業はTOPIX採用企業より営業利益の水準が高い (出所)日興アセットマネジメント

     もう一つは、北原さん自身が「オーナー企業と話してみて、サラリーマン経営者と比べると、中長期的な利益成長を目指しているとの手ごたえを感じている」からだ。

    業績向上へ強いインセンティブ

     オーナー企業は、所有と経営が一致しているので、企業業績を向上させれば、そのまま大株主であるオーナーの利益にもつながり、業績向上への強いインセンティブが働く、また、オーナーは家業を次の世代に引き継がせる必要性から、短期視線ではなく、長期目線で経営を行う。経営判断がトップダウンで迅速だから、事業環境の変化にも柔軟に対応し、機動的な方針転換も可能だ。また、「家訓」というガバナンスもオーナー企業には働くことがある。

     一方で、経営権や人事権がオーナーに集中し、企業を私物化するリスクがあるほか、下からの意見が届かず、経営判断を誤る恐れがある。

     だから、取材を通じて、経営者自身がしっかりとしたビジョンを持って、それを経営戦略に落とし込んでいるかどうかを、直接確かめる必要があると北原さんは強調する。「この企業は大丈夫なのか?と思ったら、意外に良い企業だったりすることもある。固定観念を持たず、オーナー企業の説明会などで、色々と情報を得るようにしている」。この部分が、まさに、オーナー企業への投資で実績をあげてきた北原さんならではのノウハウだ。

    シノケングループ、投資用アパートで高い入居率維持

     それでは、「ミュータント」に実際に組み入れられているオーナー企業を見ていきたい。

     一つ目は、8月末時点で、組み入れ比率が5.49%と2位のシノケングループだ。福岡県出身の篠原英明氏が1990年に創業した。サラリーマンの退職後や老後の経済的不安の解消を目指し、「資産づくり」を目的とした投資用アパートの販売を手掛けている。スルガ銀行による過剰融資問題などを契機に、投資用アパートの建設・販売業者に対し、世間一般には、あまり良いイメージがない。しかし、「実際に取材すると、そういう経営者ではないことが分かった」(北原さん)。

    駅近の物件に限定

     同社は、物件を駅から近いものに限定しているほか、デザイン性の高いアパートを自社開発することで、高い入居率を維持していることが特徴と言う。エネルギーや介護ビジネスを展開するなど、事業の多角化も進めている。インドネシアで不動産ファンド(REIT)の運営ライセンスを取得するなど、海外事業を積極化させている。「経営を任せて大丈夫か、という視点で投資をしているが、篠原氏は非常にしっかりした人で、経営力が高く、成長も期待できる」(北原さん)と言う。

    シノケングループの篠原英明社長 (同社株主招集通知書から)
    シノケングループの篠原英明社長 (同社株主招集通知書から)

    ウェルビー、障がい者の就労支援事業展開

     組み入れ比率が8月末で1位(5.58%)のウェルビーは、障がい者の就労支援事業「ウェルビー」と発達障がい児の支援事業「ハビー」の二つのビジネスを展開している。ウェルビーでは、障がい者の職業訓練、就職活動のサポート、就職後のアフターケアをしている。ハビーは首都圏を中心に展開している幼児教室で、発達障がい児向けの社会的スキル取得、学習の支援事業のほか、放課後後の個別指導もしている。「こういう福祉系の企業は、経費の削減に走ってしまうのが嫌なところだが、ウェルビーの創業者である大田誠社長は、障がい者が一般的な会社になかなか就職できないのをどうしても改善したいという気持ちを強く持っている。しっかりとした出店戦略を持ちながら、コスト管理もきちんとしている。その話を聞き、信頼しても良いと考えた。」(北原さん)。

    ウェルビー 大田誠社長(同社HPより)
    ウェルビー 大田誠社長(同社HPより)

    中古車販売のネクステージはコロナ下でも出店継続

     7月末段階で組み入れ比率が6位(5.14%)のネクステージは、中古車販売大手で、複数メーカーの中古車を展示する大型店を展開している。車両販売だけでなく、車検や保険等の付帯サービスの売り上げ比率が高いのが特徴だ。

     創業者は大阪府出身の広田靖治社長。1996年に愛知県で2台の中古車の在庫で創業したが、現在全国で173店舗を展開しており、その成長力の速さが注目されている。

     昨年のコロナの感染拡大で、昨年3月、4月は高級車が売れず、同社も大きな赤字を計上した。しかし、その後、公共交通機関ではなく、マイカーで移動したいというニーズが高まり、中古車需要が急回復した。「オーナー企業の良いところで、しっかりと損失を計上しながらも、出店を継続したことで、中古車市場が戻った時は、シェア拡大による利益・売上高の拡大を果たせている」(北原さん)。同社の2020年11月期の売上高は2400億円強だが、2030年には1兆円を目指している。

    ネクステージ 広田靖治社長(同社HPより)
    ネクステージ 広田靖治社長(同社HPより)

    ベースは中国人経営者の異色ITシステム会社

     8月末時点で、10位(4.67%)に入っているベースは、ITシステムの開発や保守運用などが事業の柱だ。ちなみに、ネット販売支援のBASEとは違う会社である。大手ITシステム会社からの受託案件の割合が高いのが特色だ。新型コロナの影響下でも、在宅勤務等を積極的に採用したことで、好調な業績が維持されている。

     社長の中山克成氏は中国の上海出身。専門学校で学び、中国でシステムエンジニアとして活躍した。その後、1987年に来日し、日本で経験を積んだあと、1997年に創業した。

    「中国人の方が経営者で、最初はどんな会社なのかと警戒感もあったが、実際に中山社長に会って、話を聞いてみると、全くそのようなことはなかった。しっかりと誠実に仕事をしていることを確認したので、投資を決めた」(北原さん)。

    ベース 中山克成社長(同社HPより)
    ベース 中山克成社長(同社HPより)

    組織の多様性がIT開発にプラスに

     社長が中国出身なので、中国人などの外国人と日本人をうまく組み合わせることで、IT開発をユニークに進めているという。「中山社長は、外国人がいると、色んな考え方が出て、社内がフェアになると言っていた。特定の人だけ優遇したり、あるいは派閥もできなくなる。組織内の多様性は大事だなと感じた」(北原さん)。2020年12月期の売上高は124億円、営業利益も24億円と順調に業績も拡大させており、20年12月には東証の2部から1部に指定替えとなった。

     こうした北原さんの独自の「目利き力」がミュータントの運用成績を支える大きな要素となっている。

    (稲留正英・編集部)

    ((下)に続く)

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