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投資の達人に聞く㉔日興AM「ミュータント」(下)己を知り、信頼できる経営者にしっかりと託す――長寿ファンドの再生請負人がジーコに学んだ三つの投資哲学とは

    日興アセットマネジメントの北原淳平さんは「背伸びはせず、できることをやる」がモットーだ(同社提供)
    日興アセットマネジメントの北原淳平さんは「背伸びはせず、できることをやる」がモットーだ(同社提供)

     日興アセットマネジメントで「ミュータント」の運用を担当している北原淳平さんは、2007年3月に東京海上アセットマネジメントに入社し、そのキャリアを開始した。最初の5年間はセクターアナリストを経験し、その後、ファンドマネージャーに転じた。

     この時に、オーナー企業に特化したファンドとして有名になった「ジャパン・オーナーズ株式オープン」の立ち上げに関わった。「ジャパン・オーナーズ」は2013年4月の設定だ。

    海外でもオーナー企業の強さを示す多数の論文

     なぜ、オーナー企業に特化したファンドを立ち上げようと思ったのか。北原さんは、「様々な国内外の研究で、オーナー企業の収益性が優れているという論文がたくさん出ていたことが一番の要因」と話す。「海外でも『ファミリービジネス』として、オーナー企業の強みを示す論文がたくさん出ている」(北原さん)。

     しかし、それまで、国内でそうしたファンドが設定されていなかったのは、オーナー企業に対する負のイメージがあったからだという。「最近では親子で対立した家具メーカーもあった。そうしたものがクローズアップされて、良くないイメージがあった。ファンドの販売会社も一般の顧客に説明しにくく、取り組みづらいと感じていた」。

    実力・顧客主義の日興アセットマネジメントに転職

     実際には「こうした経営の良くないオーナー企業を組み入れても、平均すると、オーナー企業のファンドはTOPIX(東証株価指数)に比べて利益成長やリターンで良いという研究がある」(北原さん)。そういう中で、当時のファンド販売会社の後押しもあり、オーナー企業ファンドの販売に漕ぎ着けたという。

     2019年7月に日興アセットマネジメントに移ったのは、新天地で自分の力を試してみたいと思ったからだ。

    「しっかりしたリターンを顧客にお返しするということが、当社の命題だ。ファンドマネージャーでもパフォーマンスが出ないものは、変わることになっている。私が入ったことで前任者も変わったが、それも顧客のために変更した」。

    長寿ファンド「エボリューション」も再生させる

     北原さんは、「ミュータント」以外に「日興エボリューション」というより大型株を中心に運用するファンドも担当している。こちらも設定は2000年4月21日の長寿ファンドだ。「ミュータント」と同様に、担当者変更による運用プロセスの変更を、2020年1月22日に発表。「ミュータントに近い運用手法を採用した」(北原さん)。2020年3月に一時、5000円台だった「日興エボリューション」の基準価額は、直近では1万円超に回復している。

    北原淳平さんが担当する「日興エボリューション」も基準価額が急回復している(日興AMのHPより)
    北原淳平さんが担当する「日興エボリューション」も基準価額が急回復している(日興AMのHPより)

    「日興アセットマネジメントに移ったことで、私自身が顧客にしっかりと向いて100%力を出して運用ができている。すごく心地が良くて、良かったと思っている」。

    北原さんの投資哲学

     北原さんの投資哲学はどういうものか。

    「『背伸びはせず、できることをやる』というもの。私自身、能力があると思うのは、自分の能力をしっかりと測れることだ。米国の大統領がこうなるから金利がこう動く、などと言ったマクロの経済環境にかけるようなことは一切しない」

     また、「新しい技術など私自身が詳しくない分野は、信頼できる人に託そうという考え」という。だから、「ビジョンがしっかりとあって、経営戦略に納得できる企業の経営者を信頼して、投資をする」という。

    良いオーナーは、ビジョンと経営戦略をきちんと示す

     北原さんにもう一度、良いオーナー企業の基準に聞いてみた。

    「しっかりとしたビジョンを持って、そのビジョンを実現するための経営戦略を、利害関係者、我々のような株主、投資家、従業員、債権者に示せることが大事だ。そういう企業の中で、そんなにバリュエーションが高くなっていない企業を見つけてくる」。

    ジーコから学んだ三つの心構え

     北原さんは、休日は、年間チケットを購入している鹿島アントラーズの試合を見に行っている。テクニカルディレクターを務めるジーコ氏が目当てという。「ジーコは、『献身(TRABALHO)』、『誠実(LEALDADE)』、『尊重(RESPEITO)』のジーコ・スピリッツで知られている。分野は違うが、これこそが、私が考える理想の運用者の心構えと一緒だ」(北原さん)。

    「『献身』は、顧客のためだけに頑張る。『誠実』はうそをつかず、自分のできることをやる。格好をつけて、できないことを約束しない。『尊重』は、良い運用者や良い論文があったらそれを見習うこと」という。「土日に試合を観戦し、ジーコの顔を見るたびに、この三つを考えながら、生きていこう、運用していこうと」(北原さん)。それが鹿島アントラーズの試合を見に行く理由と言う。

    鹿島アントラーズのテクニカルディレクターのジーコ氏の哲学は、北原さんの指針ともなっている(鹿島アントラーズHPより)
    鹿島アントラーズのテクニカルディレクターのジーコ氏の哲学は、北原さんの指針ともなっている(鹿島アントラーズHPより)

     北原さんは、今年41歳とファンドマネージャーとしてまさに、脂が乗った年代だ。運用するファンドの一段の「突然変異」や「進化」が期待できそうだ。

    (稲留正英・編集部)

    (終わり)

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