資源・エネルギー電力が危ない

続く電力不足 予想外の再エネ導入加速が追い込んだ火力発電の誤算=小笠原潤一

    ここ数年、火力発電所の現象が顕著だ(中国地方の三隅火力発電所、石炭火力)
    ここ数年、火力発電所の現象が顕著だ(中国地方の三隅火力発電所、石炭火力)

     2020年12月から21年2月にかけて、西日本を中心に、まさに綱渡り状態といえるほど、電力需給が逼迫(ひっぱく)したことは記憶に新しい。当時は、日本卸電力取引所(JEPX)の「電力前日スポット市場」の取引価格が、1キロワット時当たり200円(通常は8~16円)を超える時間帯も出たほか、電気事業の新規参入が多くを占める小売り電気事業者に課されるインバランス料金(電力調整料金)が、電力需給逼迫の影響で、1月11日に最高で1キロワット時当たり562・43円(通常は数円〜数十円程度)に上昇。売上高の8割をインバランス料金の支払いに充てる企業も出てくるなど、新規参入企業の経営に打撃を与えた。(電力が危ない)

     電力逼迫が一段落した3月、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、例年通り全国の電力供給計画をまとめた。それによると、21年度の冬および22年度の夏・冬に猛暑や厳冬となった場合、再び深刻な電力需給逼迫が起きるリスクがあることが明らかになった。以後、経済産業省では、電力不足対策の検討を継続して行っている。

    なぜ電力不足なのか

     かつては先進国の中でも電力安定供給の「優等生」と目されていた日本で、なぜ最近になって電力不足が起きるのか。その原因の一つは、11年の東日本大震災以降、全国の原子力発電所が長期停止したためだ。原発の長期停止に伴い、石炭火力や天然ガス火力発電所の新設計画が大量に浮上したが、固定価格買い取り制度(FIT)を背景に、再生可能エネルギー(再エネ)の導入が予想を超える速度で進み、火力発電の稼働率低下の懸念が生じ、火力発電所の新設計画からの撤退が相次いだ。

     また、再エネ拡大に伴い、電力前日スポット取引価格が低迷したことで、老朽火力発電所の収益が低下し、老朽火力の休廃止も相次いだ。これらが重なり、電力供給力が構造的に不足する状況になったと考えられる。

     火力発電の減少の要因を少し詳しく見てみよう。火力発電の設備利用率は、OCCTOが公表している供給計画で、過去の実績と将来見通しを知ることができる。それらによると、石炭、天然ガス、石油火力ともに、30年度は大幅に低下する見込みだ(図1)。このため火力発電の収益機会が大きく減少することになり、火力発電の新設計画は相次ぎ撤回された。

     また、小売り電気事業者が電力調達先として頼っている、電力前日スポット取引価格は、卸電力取引市場の「限界的発電所(最も変動費〈燃料費など〉が高い発電所)の変動費に基づいて価格水準が決まるが、17年ごろまでは石油火力の燃料費に連動していた。

     ところが、再エネの出力抑制が実施されるようになった18年ごろから、一般的に石油火力より燃料費が安い天然ガス火力の燃料費と連動するようになり、時には火力発電の中で最も燃料費の安い石炭火力の燃料費に接近する状況も出てきた。こうした市況では、石油火力や老朽天然ガス火力の発電機会が減少(稼働させて電気を市場に卸しても利益がない)するので、設備を維持しているメリットがなくなり、これら石油火力や老朽天然ガス火力の休廃止が相次ぐようになった。

    来年は夏冬とも電力不足

     21年度の冬および22年度の夏・冬の電力需給逼迫とは、具体的にどの程度なのか。

     OCCTOによると(図2)、厳冬時に西日本エリアでは、来年2月の電力供給力の予備力が、安定供給に最低限必要な3%に低下し、東京電力エリアでは、予備力がマイナス0・3%に落ち込む。特に東京電力は、他の電力会社から最大限の電力支援(電力融通)を受けても、1月、2月の厳冬時の電力需要は賄えないとしている。

     22年度の夏は、通常の需要水準に対し、東京、中部、関西電力など六つのエリアで、最低限必要な予備力8%(発電所事故による停止等が起きた場合でも安定供給できる量)を下回り、冬も東京電力エリアで予備力8%を下回る見込みとなった。猛暑や寒波で電力需要が大きく増加する場合は、夏は7月に東京、中部、関西電力など7エリアで、予備力が3%ぎりぎり、9月は東京と中部電力で3%を切る。23年度の冬は、東京電力エリアで、1月から3月の予備力が、マイナス2・4~0・8%に悪化する。

     欧州ではすでに天然ガス価格が高騰しており、LNG(液化天然ガス)の需給が国際的に逼迫すれば、前回の電力需給逼迫時と同様に、火力発電の燃料不足に陥る可能性もある。

    2030年まで不安続く

     経産省や電力業界では、対策に乗り出しているが、資源エネルギー庁の集計では、16年から30年までの間に、1853万キロワットの大手電力会社の火力発電が減少するとしている。

     天候の影響で発電量が不安定な再エネの増加に伴い、その不安定発電を補うための調整用電力が、今後はより多く必要になる。これまでは火力や水力発電がそれを担ってきたが、それに代わる経済的に利用可能な発電設備は登場していない。火力発電は計画から建設、運転開始までに10年近くかかる。現時点で新設計画がなければ、30年まで調整力が低下する可能性が高い。夏冬の電力需給逼迫だけでなく、今後は再エネとの調整をどうするかも課題になる。

    (小笠原潤一・日本エネルギー経済研究所研究理事)

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