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教養・歴史書評

株主への手紙をはじめ、アマゾン創業者の言葉を読む=評者・加護野忠男

『Invent & Wander ジェフ・ベゾス Collected Writings』 評者・加護野忠男

著者 ジェフ・ベゾス(Amazon創業者) 訳者 関美和 ダイヤモンド社 1980円

アマゾンを躍進させた創業者 自信にあふれた言葉の数々

 米アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスの文章を、米『タイム』誌の編集長であったウォルター・アイザックソンが選択・編集し、解説を加えた書物である。二つの章に分けた構成で、第1章は、ベゾス氏自身が書いた「株主への手紙」から選ばれたもの。第2章は、彼のインタビューや講演からの再録だ。

 編者は序章で、ベゾスの実績について解説し、その経営活動の中で注目すべきことを5点にまとめている。(1)「長期」に目を向ける、(2)しつこく情熱的に「顧客」に集中する、(3)パワーポイントとスライドを使ってのプレゼンテーションを避ける、(4)「大きな判断」に集中する、(5)「適材」を採用する──の五つである。

 編者は、『タイム』誌がベゾスを「パーソン・オブ・ザ・イヤー(今年の人)」に選んだ1999年末当時の編集長であり、米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏やアインシュタインの伝記も書いている。序章では、これらの偉人とベゾスの共通点にも触れている。本書の特徴は、ベゾスの発言の日付が明確に記されていること。成功した企業家のインタビューは、成功後に行われたものが多く、そうした事後的なインタビューでは後知恵での説明が入ってしまうが、本書にはそれがない。

 アマゾンは先行投資が大きく、利益を出すのが難しかった。株価のピークは「ドットコムバブル」(IT関連企業の異様な値上がり時期)がはじける直前の99年12月。そこから株価がどんどん下降していく逆風の中で書かれた2000年の株主への手紙は、特に注目に値する。

 その手紙は冒頭「いたた」で始まっている。「いたた。本年度は市場参加者の多くにとって、また、とくにアマゾンの株主のみなさまにとって厳しい年になりました」と書き、株価が1年前より80%以上下がっているというマイナス情報がまず示される。その後、ポジティブな話題に転じ、売り上げ増、顧客増といった明るい事実が数字で示され、長期経営の効果を測る指標も好調であること、さらに今後も、長期的な視野で経営を行う決意が語られている。

 その決意表明には、同時にリスクが伴うことも明確に説明され、弁解は見られない。陳謝と弁解が先に来る日本の経営者の株主へのメッセージとは違う。同じく日本の経営者にありがちな、自らを卑下するような文章もない。それどころか、著名な投資家の言葉を引用し、揺れ動く市場評価に対して皮肉を書いている。

 日本の経営者にも、自信にあふれた文章と態度をぜひ見習ってほしい。

(加護野忠男・神戸大学特命教授)


 Jeff Bezos 1986年に電気工学とコンピューターサイエンスの2分野でプリンストン大学を卒業。93年にアマゾン設立。2018年にホームレスの家族などを支援するため「ベゾス・デイワン基金」を設立。

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