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教養・歴史書評

文革から半世紀、劉少奇の遺児が回顧録=辻康吾

中国 忘れがたき文化大革命─劉少奇回顧録─=辻康吾

 中国を揺るがし、世界を驚かせたプロレタリア文化大革命が終わってほぼ50年。その口火を切った紅衛兵たちも定年を迎え、最大の悪役とされた劉少奇国家主席は1969年に虐待の中で横死し、ともに苦難を味わった妻の王光美は2006年に病死している。

 残された遺児たちもそれぞれに成長したが、1951年に王光美との間に生まれた劉源は、文革後地方の行政職を務め、河南省副省長として89年の天安門事件に際しては武力鎮圧に反対、党中央から冷遇されたと言われる。しばらく引退していたが、その後解放軍幹部となり2010年に総後勤(兵站(へいたん))部政治委員となり、折から党総書記に選出された習近平を助け、何回かの暗殺の危険にさらされながらも軍内の汚職摘発に貢献した。

 一時は習と並ぶ国家幹部へのうわさもあったが、なぜか15年、要職を退き、閑職に就いている。引退後の18年、父の劉少奇らを回顧する『夢回万里 衛黄保華』を出版、初代革命家たちの回想を記し、読者の好評を得ていた。

 その劉源が今度は、父の劉少奇を中心に建国当初からの現代中国史を回顧した『夢回千古少奇永在 漫憶父親劉少奇与新中国(上)』(2021年、人民出版社)を発表した。同書は劉少奇ら中国革命の第一線にあった英雄たちの身近にあってその生活、感情、思想を記すとともに、未公開の党資料などを駆使し、歴史について冷静な分析と判断を行っている。同書は上下2巻本の上巻で、時期は新中国建国から文革前までの中国において社会主義が混迷し始めた時代を扱っており、その多くは今日の中国にとってもなお解決されていない問題の萌芽(ほうが)をうかがうことができる。ただ父親ら無数の古参幹部が犠牲となった文革の詳細については下巻の出版を待つしかないが、そこに中国政治の本質が隠されているかもしれない。

 というのも50年後の今日から振り返ってみると、中華の大地で2000年余り繰り返されてきた覇者の争いに過ぎなかったようにも思われてくるからである。建国70年余り、中華人民共和国は悠久の中華史に何か画期的な一点を書き加えることができたのであろうか。

(辻康吾・元獨協大学教授)


 この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。

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