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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

母として、選手として 元バレーボール女子日本代表キャプテン、荒木絵里香さん

「日本のママアスリートはまだまだ少ない」

荒木絵里香 元バレーボール女子日本代表キャプテン/33

 バレーボール女子日本代表として、昨夏の東京まで4回連続で五輪に出場した荒木絵里香さん。子育てとの両立に悪戦苦闘しながら女性アスリートとして第一線で活躍した。現役を引退した今、新たなキャリアを切り開く。

(聞き手=元川悦子・ライター)

── バレーボール女子日本代表のキャプテンとして昨夏の東京五輪に出場し、これを最後に現役を退きました。その後はどのように過ごしていますか。

荒木 昨年10月の引退会見で一区切りつけた後は、以前からの念願だった8歳の娘との時間を増やすことができました。学校や習いごと、友達との遊びと、小学生の一日はこんなにも慌ただしいんだと再認識しましたね。一緒に料理をしたり、日常の何気ない時間がうれしかった。同時に今まで競技活動を支えてくれた母への感謝の気持ちも強まりました。(情熱人)

── 5年間プレーしたVリーグ1部・トヨタ車体クインシーズで現役引退後、チームコーディネーターも務めました。

荒木 2020年春に家族で生活拠点を千葉県に移しましたが、現役引退後も月に数回、(チームの本拠地のある愛知県)刈谷市へ行き、リーグ戦も半分程度帯同して強化にも携わりました。チームの体制について会社やチームと話したり、選手のサポート役としても活動しました。21─22年シーズンは1部・10位でギリギリの残留。チームが若返り、10代選手が7人くらい出場しましたが、強くなる布石は打てたのかなと前向きに捉え、今後も役に立てるように努力していきます。

── 今年4月からは早稲田大学大学院で新たな学びをスタートさせましたね。

荒木 はい。自分には30年近くバレーボールをやってきた経験はありますが、それを違った角度から見たことはなかった。このタイミングで学び直して新たな知識を伝えられるようになりたいという思いが強く、周囲と相談して、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の松井泰二教授に師事したいと考えました。入試は今年1月で、課題リポートを提出して面接を受け、入学を許可されました。

── 久しぶりの授業はどうですか。

荒木 20年ぶりの授業はものすごく刺激的ですね。(キャンパスのある)埼玉県所沢市に週2~3回通って講義を受けています。自分の研究テーマはブロック。日本女子の弱点でもあるので、少しでもプラスになるような成果を出したいと思っています。パワーポイントやエクセルを扱うのも四苦八苦していますが、仲間の力を借りながら、1年間で修士論文を出して卒業できるように頑張ります。

人生観を変えたイタリア

 早稲田大学ラグビー部OBの父、体育教師の母の長女として1984年に生まれた荒木さん。バレーボールを始めたのは小学5年の時。成徳学園(現下北沢成徳)高校(東京都)時代は大山加奈選手らとともに高校3冠を達成。03年の東レアローズ入り直後には日本女子代表にも選ばれた。が、04年アテネは落選。そこから必死の努力を重ねて08年北京五輪出場を果たし、「ベストブロッカー賞」も受賞した。

 そんな荒木さんの人生観を変えたのが、08年のイタリア移籍。「仕事と競技を掛け持ちする人、大学に行きながらプレーする人などいろんな選手がいた。自分にももっと違った何かがあっていい」と感じたという。「海外では女性アスリートの結婚・出産は特別なことじゃない。僕らが日本の新たなモデルを作っていけばいい」と言う元ラグビー日本代表の四宮洋平さんと13年に結婚し、荒木さんの人生は大きく動き出した。

── 荒木さんは2度目の五輪となった12年ロンドン大会で日本女子代表のキャプテンを務め、銅メダルを獲得しています。そこで現役を退くことは考えなかったのですか。

荒木 バレーボールは続けたかったのですが、4年後のリオデジャネイロ五輪までがあまりに長すぎて具体的に考えられないのが正直な気持ちでした。ただ、ロンドンで銅メダルを獲得した時、自分よりも喜んでくれる人がいるという重みを再認識したのは大きかった。大会の明暗を分けた準々決勝・中国戦でフルセ…

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