今後3年のサービス展開は世界15都市、日本10万カ所
秋山広宣 インフォリッチ代表取締役CEO
日本全国どこでも借りられてどこでも返せるスマホ充電器バッテリーのシェアリングサービスを手掛ける。
(聞き手=白鳥達哉・編集部)>>>これまでの「挑戦者2022」はこちら
スマホ充電を一大インフラに
スマートフォンの充電バッテリーのシェアリングサービス、「ChargeSPOT」(チャージスポット)を運営しています。チャージスポットでは、全国にある駅や空港、コンビニエンスストアなどに設置された充電スタンドから、携帯用のモバイルバッテリーをレンタルできます。借りる際は、充電スタンドに表示されたQRコードを専用アプリで読み取って支払い方法を選ぶだけ。使い終わった後は、充電スタンドのある場所ならどこでも返却が可能です。
充電スタンドの設置場所は、日本全国で3万カ所以上、日本以外にも香港や台湾、タイなどにもグローバル展開しています。レンタル料は利用時間によって変わり、30分未満なら165円、30分~6時間未満は330円などと設定しています。支払いはクレジットカードや携帯電話料金とまとめての支払いのほか、ペイペイやLINEなどのQR決済アプリにも対応しています。
利用までの流れも簡単にしています。専用のアプリをインストールして使うこともできますが、QR決済アプリにはあらかじめサービスの一つとして組み込まれているため、すぐに決済情報とひも付けが可能です。LINEの場合は、チャージスポットの公式アカウントを「友だち登録」した後、支払い方法を選択すれば、すぐにバッテリーを借りられます。
自分の名前が持つ意味
私は父が香港人、母が日本人のハーフで、中国名である「日華」は、日本と中国を表す文字を組み合わせたものです。そのため、子どものころからその名前が持つ意味を考えて育ちました。
10歳の時に福島県いわき市に移住し、その後は音楽の道で活動を始め、2007年にラッパー「日華」としてメジャーデビューしました。その際も個人の一貫した目的として、香港と日本、ひいては日本とアジアの距離を近くしたいと考えていて、同じ歌詞を日本語、広東語、英語で歌う曲なども作りました。
娘が生まれたことをきっかけに香港に再び移住すると、日本の企業が香港に進出しようとして失敗する事例を目にするようになります。コミュニケーションや交渉の仕方の違いによるもので、それならばと、日本企業の香港進出を手伝うコンサルティング会社を香港で立ち上げました。その後、今度は自分の会社で懸け橋となる事業をやろうと考えたのが、インフォリッチを15年に設立した経緯です。
チャージスポットの事業を始めたのは18年からです。バッテリーのシェアリングサービスは当時、中国で流行していました。これを日本向けに改善して持ち込めば、日本でも大きなインフラとして機能するのではという考えがありました。中国で出てきた多くの将来有望なサービスの中から、日本でも認められるものを選んで、日本の中でブラッシュアップを重ねて他の国へと展開していく。これは中国と日本の言葉や文化、それぞれの国での暮らしを知らないとできないことで、私のもつ一番の強みだと自負しています。
今夏以降は、フランスのパリでもグローバル展開を始めます。すでにサービスを始めているところも含め、今後3年間で15の国と都市でチャージスポットが利用できるようにします。日本国内でも10万カ所を目標に充電スタンドの場所を増やす予定です。
企業概要
事業内容:モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」の運営
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2015年9月
資本金:1億円
従業員数:99人
■人物略歴
あきやま・ひろのぶ
中国名は陳日華(ちん・にっか)。1980年香港生まれ。2007年ラッパー(ラップ音楽の演奏者)として日本でメジャーデビュー。12年に香港に移住し、コンサルティング会社など手掛けながら、15年インフォリッチを設立。41歳。日本国籍。