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アンモニアや水素を使う日本の脱炭素エネルギー技術=金山隆一

神戸の市街地に設置された水素ガスコージェネレーション 川崎重工業提供
神戸の市街地に設置された水素ガスコージェネレーション 川崎重工業提供

脱炭素への道

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アンモニア・水素で発電する日本製タービンに世界が注目=金山隆一

「再エネの変動性を補う調整力・供給力として必要となる火力発電の脱炭素化が急務の中、燃えやすい水素はガス火力、燃焼速度が比較的遅いアンモニアは石炭火力の脱炭素化のカギとなる」

 5月13日に経済産業省産業技術環境局と資源エネルギー庁がまとめた「クリーンエネルギー戦略・中間整理」が次世代エネルギーとして期待される水素とアンモニアの使い道を明確に示している。

 アンモニアは東京電力ホールディングス(HD)と中部電力が折半で15年に設立したJERAが石炭火力発電の脱炭素化に向けた切り札として燃料に使用し混焼、最後はアンモニア専焼にして炭素排出ゼロとするプランを明確に打ち出している。

 JERAと歩調を合わせるように大手商社や化学、重機メーカーなどはアンモニアの調達や新たな製造法、大型タービンの開発に乗り出している。

 問題は水素だ。水素は自然界には存在せず、製造には大量の1次エネルギーを消費する。

 再生可能エネルギーの価格が欧米に比べて圧倒的に高い日本では安価な水素の組成が難しいのだ。エネルギー密度が低いのも問題だ。水素は都市ガスのカロリーの3分の1しかなく、輸送や貯蔵に多大な負担がかかり、今現在普及している都市ガスの配管(パイプライン)で水素を輸送するとなると同じ熱カロリーを得るには3倍の太さにしなくてはいけない。大手ガス会社は水素に二酸化炭素(CO₂)を混ぜて合成メタンを作り、都市ガスに混ぜる計画を進めているが、2030年でわずか1%に過ぎない。

 大量輸送や長距離輸送にはインフラが必要で、輸送や貯蔵には極低温にしたり液化輸送する技術も必要になる。

世界で胎動、水素発電

 最大の問題は、安定需要の創出だ。こうした中で今注目されているのが水素ガスタービン発電。三菱重工業によれば「20年ごろから水素ガスタービンの商談が大きく増加している」という。ガスタービン市場の規模は全世界で年間30~50ギガワット。「今後もこの水準が維持され、燃料が天然ガスから水素に移行すると考えている」という。

 実はこのガスタービン市場で三菱重工のシェアは22年第1四半期で36%に達する。米GE、独シーメンスを抑え、世界3強のトップに躍り出ている。

 ポイントは燃焼器を水素用に切り替えるだけで、ガスタービンの構造は従来の天然ガスだきから変わらないことだ。

 三菱重工では米国西海岸で安価に発電できる再エネで水を電気分解してCO₂を全く発生しない「グリーン水素」を製造し、これを北米に豊富に存在する地下岩塩層の空洞に貯蔵し、電力の必要時に取り出しガスタービンで発電するプロジェクトを米ユタ州のソルトレークシティーで進めている。米ジョージア州では今年6月、三菱重工が過去に収めたガスタービンで水素を20%混焼させる試験にも成功した。

 国内では石炭火力のアンモニア混焼から専焼へのシフト。海外では再生可能エネルギーが安く取り出せ、水素やCO₂を枯渇したガス田や地層などに貯蔵することができる米欧を中心に水素ガスタービンの需要を狙う──という生き残り戦略が日本が取り組むべき脱炭素の一つの方向だろう。

 ただ米欧にとどまらずアジアや中東でも水素プロジェクトが次々に表明されており、日本は水素の特許で世界首位とはいえど、まごまごしていると周回遅れになる可能性もある。

(金山隆一・編集部)

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