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週刊エコノミスト Onlineロングインタビュー情熱人

新潟県の障害者・福祉の貴重な記録をつづる 桐生清次さん

「私のこれまでの仕事が『真の共生社会』の実現に思いをはせるきっかけになれば」 撮影=内田誠吾
「私のこれまでの仕事が『真の共生社会』の実現に思いをはせるきっかけになれば」 撮影=内田誠吾

桐生清次 指定障害福祉サービス事業所「虹の家」元園長/44

“最後の瞽女(ごぜ)”といわれた盲目の旅芸人、小林ハルさんや新潟県内の福祉活動に従事してきた人たちを丹念に取材し、伝記として貴重な記録を残し続けてきた桐生さん。また、障害者支援にも力を注ぎ続けてきた。その根底にある思いとは──。

(聞き手=内田誠吾・ジャーナリスト)>>>これまでのロングインタビュー「情熱人」はこちら

「“最後の瞽女”はどんな苦しみにも耐えて生きた」

── 桐生さんの著書『最後の瞽女(ごぜ) 小林ハルの人生』(文芸社、2000年)が原作の映画「瞽女GOZE」が今年6月、ドイツ・ハンブルクで開かれた第23回ハンブルク日本映画祭で観客賞を受賞しました。三味線を弾きうたい、各地を巡業する盲目の芸能者の生涯を描いていますね。

桐生 電話で受賞を知りました。映画「瞽女GOZE」は20年に初めて上映されました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった当時、映画館で十分に上映されることはありませんでした。今年に入り、再上映される機会が増えてうれしく思っています。

── ハルさんは瞽女になるために、幼少時から厳しい稽古(けいこ)をしてきたそうですね。

桐生 ハルさんが6歳のころから歌や三味線の稽古が始まり、稽古は午前5時から晩まで一日中。朝起こされると朝飯抜きにされるので、午前4時半には毎日自分で起きていました。雪深い冬でも信濃川の土手に立ち、風が吹きつける冷たい川風に向かい、歌の稽古をしていました。せきが出て血が出ても休ませてもらえなかったそうです。

 母親の言葉も印象的です。ハルさんが初めて旅に出る時、母親は「これから何事も人のやっかいになるので、何を言われてもハイハイと言い、口ごたえをしてはいけない」と涙ながらに言い聞かせたそうです。ハルさんは実際、どんなに嫌なことがあっても我慢し続け、一貫して「悪い人と組めば修行、よい人と組めば祭り」と思って生きてきたようです。

 かつて主に関東甲信越を中心に家々を巡り歩く姿が見られた瞽女。新潟県は最後まで瞽女が見られた地域であり、「長岡瞽女」「高田瞽女」という二つの流派の瞽女組織があった。“最後の瞽女”である小林ハルさんは1900年に新潟県三条市で生まれた。生後100日で白内障にかかり失明。3歳で父親と死別し、5歳で瞽女にもらわれ、9歳で親方に連れられて旅に出る。05年に105歳で亡くなったが、その過酷な生涯は多くの人々に衝撃を与えた。 桐生さんは小林ハルさんの元に50回以上も取材に通い、本としてまとめ上げた。

「次の世は虫になっても」

── 同じ瞽女からの意地悪でハルさんは子どもを産めない体になりましたが、体を傷つけた相手の名前を明かしませんでした。

桐生 子どもを産めない体になった後、2歳の女の子を養女にもらい育てる中で、母親としての喜びを感じていました。しかし、4歳で病死するなど、ハルさんの一生は苦難が絶えません。ハルさんは「この世で明るい目をもらってこれなかったのは、前の世で悪いことをしてきたからだ。だからこの世ではどんな苦しみにも耐えて生きる。その代わり、次の世では虫になってもいい。明るい目をもらって生きたい」という強い願いを持って生きていました。

 77年に77歳となり、瞽女仲間がいる新潟県黒川村(現・胎内市)の施設「胎内やすらぎの家」で過ごし始めた時、初めて幸せを感じたようです。78年には、国の無形文化財保持者にも選ばれました。

── 自分の人生を生き切った小林ハルさんの生き方は多くの共感を呼びましたね。

桐生 障害者が人間として生まれてきた命を大切にし、どんな苦しみにも耐えて生きる。その生き方を知ってもらうことは障害者理解に役立つと思い、2年間にわたり取材を続けて『次の世は虫になっても 最後の瞽女小林ハル口伝』(柏樹社、81年)を出版しました。そ…

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