週刊エコノミスト Onlineロングインタビュー情熱人

不安な社会の“ガーリー毒” 漫画家でコラムニスト、辛酸なめ子さん 

「日本で夫婦別姓が取り入れられることはなさそうだな、とあきらめが生まれてきました」 撮影=蘆田剛
「日本で夫婦別姓が取り入れられることはなさそうだな、とあきらめが生まれてきました」 撮影=蘆田剛

辛酸なめ子 漫画家 コラムニスト/45

 この人の手に掛かれば、ありふれた日常は異世界と化し、人間の性(さが)や深層心理も暴かれてしまう。それでいて、くすっと笑えるセンスも持ち合わせる。そんな異才の素顔とは──。

(聞き手=大宮知信・ジャーナリスト)»»これまでのロングインタビュー「情熱人」はこちら

「国に頼れないからスピ系にはまるのです」

── このところ矢継ぎ早にスピリチュアル関連(スピ系)などの著作を出し、テレビや新聞などのコメンテーターとしてもよく名前を見かけます。著作は今年8月の『辛酸なめ子、スピ旅に出る』(産業編集センター)で50冊を数えますね。

辛酸 なかなか本が売れるということはなくて……。絶版になっているのもありますし、増刷になったのもちょっとしかないですし……。セレブの生態を調べたり、皇室のコラムも書いたりしていますが、スピ系は自分でも興味のある分野なので、いろいろ探っています。例えば、ものを食べない人とかね。

── そんな人もいるんですか……。辛酸さんの著作を見ると、自分自身がどこまでスピリチュアルにのめり込んでいるのか、わりと冷めた目で見ているのではないかと思うのですが、どうなんでしょう?

辛酸 自分も経験していいものは取り入れています。このスピリチュアルな健康法がいいなと思えば自分でもやってみます。例えば、「アーシング」は地球の大地と直接つながる健康法です。靴を脱いで土の上に立って地球のエネルギーを吸収し、自分の中のいらないものを外へ出してしまう。そういう健康法がここ何年か話題になっています。

── アーシングは自分でも実践しているのですか。

辛酸 はい。近くの公園に行って、靴を脱いで、靴下は履いたままですが、土の上を歩いたりします。あとはヨガや瞑想(めいそう)の先生である相川圭子さんの下で健康瞑想などを学んでいます。スピリチュアルを怪しいと批判的に書く人はけっこういますが、私は批判するというより、自分もちょっと経験してみて、その楽しさだったり、何でそこまで支持されているのか知りたいという気持ちですね。

── 宗教には人を引きつける魔力があるといわれますが、スピリチュアルにも同じような魔力があるのでしょうか。

辛酸 ありますよね。私自身も(その魔力に)引きつけられたのかもしれません。国や政府は不安に応えない。政治にも頼れない。だから、目に見えない存在に救いを求めるということが、スピ系にはまってしまう理由なんじゃないでしょうか。国に頼れないからスピリチュアルに頼ったりすると思うんです。生きていくすべは自分で見つけるしかないのかなと。

「貴族の家に生まれたかった」

── 今年7月には安倍晋三元首相が銃撃されて死亡する事件が起き、旧統一教会と政治の関係に注目が集まっています。

辛酸 襲撃された時は本当に気の毒だなと思いましたが、その背景の方に驚きました。日本の政治がこんなに宗教がらみで、宗教のお金でズブズブの関係だったんだと、あの教団に関係している政治家がこんなにもたくさんいたことにショックを受けましたね。教団は政治家の秘書まで送り込んでいたそうで、知らないうちに、そういう宗教に感化されてしまう人が多いのかな。 

 スピリチュアルの世界から人間関係、皇室問題、海外セレブまで幅広く観察・分析し、“ガーリー毒”と評される皮肉の利いた指摘が特徴の作品を発表し続ける辛酸さん。2000年の初の著作『ニガヨモギ』(三才ブックス)は、ヌルさと鋭さが絶妙なバランスを保った作風が話題になった。ちょっと変わったペンネームは、高校時代に周囲から「薄幸そうに見える」と言われていたことから。愛称は「なめちゃん」。

── そもそもなぜ、スピリチュアルにはまったのですか。

辛酸 子どもの時から何か目に見えないものとか世界が好きで、夜中家で寝ているとき、目を開けると色とりどりの人魂(ひと…

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