労働生産性の日米格差を「仕事を楽しむ」ことから考える 多田博子
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「お宅は週に何回出社ですか?」。ワシントンDC駐在員間では、働き方に関する話題がしばしば交わされる。今やテレワークとオフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」は日常だ。在宅勤務を好む米国人従業員は多い。好調な労働市場の下、週2日の出社を3日に増やせないか打診したら転職してしまった、といった話も聞く。「日本人は毎日出社ですけどね」というのが会話のオチだ。国内でも海外でも、日本人はおおむね真面目によく働く。日本人は信頼でき、日本企業とは長期的な関係を構築できるとの米国企業の声も多い。
一方、国際労働機関(ILO)が各国の労働生産性を比較した2021年の統計によると、時間当たりの労働生産性は、米国の70.6ドル(世界4位)に対し、日本は40.3ドル(世界41位)で6割にも満たない。背景として日本人の労働時間が長い、日本のサービスの質が高いなど諸説あるが、決定的な理由は解明されていない。格差の真の理由は、何なのだろうか。
普通の米国人従業員は、基本的に残業はしない。企業内の職種や職位ごとに、担当する職務内容や責任の範囲、難易度、必要なスキルなどを明記した「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」で決められた範囲の業務を行う。午後6時以降や週末は、米国人従業員に対してなるべくメールを送らないよう配慮しているとの日本人マネジャーの話も聞く。
米国のネットワークやインフラが最先端で、効率的に成果を出せるかといえば必ずしもそうではない。人手不足も相まって、ネットワーク機器の修理や更新に数カ月、修理できても雑な処理で再度トラブルということもある。
一部による引き上げ
日米労働生産性格差の理由として、「一部のハイパフォーマーたちによる全体の引き上げ」があると感じる。米国人の働き方は単一で…
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週刊エコノミスト
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