売上不振を背景に、秋は各種キャンペーンの連続 永江朗
10月27日から11月23日までは第1回秋の読書推進月間。公募で決まったキャンペーン名は「本との新しい出会い、はじまる。BOOK MEETS NEXT」。出版文化産業振興財団、読書推進運動協議会、日本図書普及、「本の日」実行委員会が合同で実施する。全国の書店では書店めぐりスタンプラリーなどさまざまなイベントが開催される。日書連(日本書店商業組合連合会)に加盟する書店では、期間中「秋の読者還元祭」として書籍・雑誌購入者に「名画しおり」(フェルメールの「真珠の首飾りの少女」)を配布。抽選で図書カードが当たるキャンペーンを行っている。
もともと文化の日を挟んだ10月27日から11月9日までの2週間は読書週間として親しまれてきた。読書月間はさらにこれを2週間延長したかたちだ。11月1日は「本屋でまってるよ」を掲げる「本の日」でもある。
話は前後するが、東京都書店商業組合は10月6日から「#木曜日は本曜日」キャンペーンを開始している。週に1度は書店に足を運んで、と呼びかけるもので、特設サイトでは週替わりで芸能人やインフルエンサーが本との関わりや「人生を変えた10冊の本」を紹介している。
読書推進や書店での購買を呼びかける声が大きくなっているのは、それだけ厳しい状況が続いているからだ。たとえば日販(日本出版販売)が毎月発表している「店頭売上前年比調査」を見ても、2022年はどの月も前年比マイナス10〜15%程度。コロナ禍をきっかけにネットでの購入が習慣化した消費者も多く、書店からは「買わなくてもいいから、とにかく本屋をのぞいてほしい」という悲痛な声も聞こえてくる。実際、図書カードが当たるキャンペーンは店頭に掲示されたポスターのQRコードを読み取ることでも参加できる。
一方、10月24日から12月24日まで書協(日本書籍出版協会)が開催する「謝恩価格本フェア」は113社、約4700銘柄の書籍を本体価格の45%引きで販売するものだが、販売ルートはネット書店の楽天ブックスのみに限られる。書店店頭活性化への思いには業界内でも温度差があるようだ。
この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。
週刊エコノミスト2022年11月8日号掲載
永江朗の出版業界事情 売り上げ不振背景に、秋はキャンペーン連続