いまや半導体は“国家の生命線” 溝口健一郎
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7月に愛車スバルを手放した。冬にも強く、軽快な走りのフォレスターは気に入っていたのだが、走行距離が6万マイル(約9万6000キロ)に達したことと、リース切れのレクサスを買えるタイミングだったため、決断をした。5年前に中古で9000ドルだった2008年モデルのスバルは、9500ドルで売却できた。米国における車の需給が極めて逼迫(ひっぱく)していた状況のおかげである。
その根本原因は半導体不足にある。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要などでパソコンやゲーム機器へのニーズは大幅に増加。自動車市場も急回復し、半導体への需要が高まる一方、コロナ前から半導体メーカーは生産投資の縮小に動いていたことなどから、需給は逼迫している。米国では車だけでなく、洗濯機やドライヤー、医療機器に至るまでさまざまな電気製品が半導体不足で入手困難になった。半導体というものが生活に関係するなどとは考えてもいなかった消費者は、この事態に驚いた。
米国の夏のバケーションでは、飛行機で空港に到着してからビーチや国立公園などの目的地にレンタカーで向かうというスタイルが一般的だが、この夏は車不足でレンタカーが借りられず、バケーションを断念した家族が多かった。
若い世代が影響を受けたのはゲームだ。プレイステーション5は発売後1年たっても手に入らない。SNSには半導体不足解消を待っているうちに骸骨になってしまうというイラストまで登場した。
現在は、トヨタ自動車が半導体不足で生産停止を余儀なくされるなどの例はあるものの、景気減退によるパソコン需要の減少や、半導体生産の回復などのため、需給は徐々に緩和されつつある。
しかし、半導体を巡る状況は別の要因で激変している。米中の対立を背景とする安全保障への懸念からだ。世界の半導体の生…
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週刊エコノミスト
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