太平洋の島国に米が熱視線 背景に中国の存在感 鈴木洋之
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インド太平洋地域のインフラ協力は、日米の2国間の枠組みに加え、日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」や、「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」など、さまざまな国際連携で主要な協議事項に定着している。筆者も米関係者との対話の機会を多く持つが、足元では、ASEAN諸国向け協力に加え、太平洋島嶼(とうしょ)国に対する米国の視線が熱くなっている。5月に米国が発表したIPEFにはフィジーが駆け込みで参加。9月下旬には、バイデン大統領が太平洋島嶼国首脳をホワイトハウスに集め、初の米・太平洋島嶼国サミットを開催している。なぜか。
主要因は中国の台頭だ。特に注目されているのがソロモン諸島で、4月に中国との間で安全保障協定を締結。8月には米軍艦の寄港受け入れを一時的に停止するなどの動きを見せている。中国が海洋補給拠点を確保し、海洋監視能力を強化しながら、太平洋地域における影響力を拡大する懸念が高まっている。太平洋島嶼国は、日本の伊豆・小笠原諸島からグアムに延びる「第2列島線」と、ハワイを基点とする「第3列島線」の間の広大な地政学上の重要空間を占め、この空間への中国の進出は米国のインド太平洋安全保障戦略にとって大きな影響を及ぼす。
揺らぐ米国との関係
これに加え、あまり目立っていないが見逃せないのが、米国の影響力が大きい自由連合盟約(通称コンパクト)を締結する3カ国(パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島)と米国の関係が微妙に揺らいでいることだ。この3カ国は、第二次大戦後、米国が施政権を有する国際連合信託統治領となったが、1980~90年代に米国と3国がそれぞれコンパクトを締結し、独立。他方、経済援助を与える代わりに安全保障は米国が統括するという取り決めとなった。しかし、島嶼国側には米国が義務…
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週刊エコノミスト
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