経済・企業2022年の経営者

中古品のオークションで成長 藤崎慎一郎・オークネット社長

Photo 武市公孝:東京都港区の本社で
Photo 武市公孝:東京都港区の本社で

藤崎慎一郎 オークネット社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)>>これまでの「2022年の経営者」はこちら

── 手掛けているのはどのような事業ですか。

藤崎 当社はBtoB(企業間取引)向けのオークション会社です。一般消費者は入れない会員制の流通で、中古品を中心にいろいろな商材を扱っています。中古品は状態によって価格が異なり、希望者数人が競り合って値段を決めるのが一般的で、当社がそのプラットフォームを提供しています。

── 祖業は中古自動車の販売であり、今も収益の柱です。中古車流通の特徴は。

藤崎 1984年の創業当時から、オークションをオンラインで手掛けています。当時はインターネットはなかったので、出品する中古車を撮影したレーザーディスクを配布し、電話回線を使いながら、言わばEC(電子商取引)のような方法で販売していました。今でこそ製品を見ないでECで商品を買うことも当たり前ですが、当時は抵抗も大きかったです。そこで当社が力を入れたのが検査です。バイヤーの目の代わりになる検査員を養成して厳しい検査を行い、どこに問題があるのか、中古車の状態を細かく情報化しました。それが受け入れられ、成長しました。

── 業界内でのシェアはどれぐらいでしょうか。

藤崎 2021年の中古車オークション市場の成約台数は474万台ですが、当社グループ全体の成約落札台数は44万台で、1割近くを占めています。当社はプラットフォーマーなので、基本的に加修をせず、仕入れた製品をそのまま売っています。しかし、最近は修理のサービスも行っています。

── 今後はEV(電気自動車)の中古車市場も活性化するのではないですか。

藤崎 新車全体に占めるEVの割合はまだ2%ほどしかないため、中古車市場ではEVは1%未満です。バッテリーの劣化具合がどの程度なのかが分からないため、怖くて買えないという消費者が多いためです。それが中古EVの課題になっています。

── その対策は。

藤崎 中古EVのバッテリーを検査する会社に出資して、検査方法を探っています。中古EVに限らず、製品の状態を細かく明確な情報にしてバイヤーに提供することは、中古品の流通の最も重要な要素です。今後、中古EVの需要は高まっていくでしょうし、中古EVのバッテリー検査に先陣を切って取り組むことで、中古EV市場を活性化させたいです。

顧客の中古品ケア支援

── そのほかに扱っている商材はどのようなものですか。

藤崎 現在は、中古車、中古デジタル機器、ブランド品や高級時計などのコンシューマープロダクツという3本柱のほか、中古のバイク、中古の医療機器、花きを手掛けています。そのうちデジタル機器の流通は04年ごろから始めましたが、最初の10年は中古パソコンで苦戦しました。その後、高性能のスマートフォンが海外で高く売れることが分かり、中古のスマホの流通が軌道に乗り始めたため、中古車に迫る勢いで成長しています。

── 最近は中古のブランド品市場も好調です。

藤崎 ここ数年は、コンシューマープロダクツ事業が大きく伸びています。20年に消費者からブランド品の買い取りや小売りを行っていた「ギャラリーレア」という会社を子会社化し、消費者向けビジネスを始めたことが成長の起爆剤になりました。世界的な環境意識の高まりからリユース(再利用)品が見直されていることと、日本の中古品は奇麗に使われて品質が良いことから、欧米市場で非常によく売れるようになっています。

── 今後の成長戦略をどう考えていますか。

藤崎 今後は二つの展開を考えています。一つは、海外への展開です。日本で仕入れた商材を海外向けに販売するビジネスは既にやっていますが、海外で仕入れて日本に輸入するビジネスに新たに挑戦したいです。

 もう一つは、大手の顧客との取引拡大です。ESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まり、メーカーは製品を作って売って終わりではなく、中古品のケアが社会的責任になっています。しかし、大企業でも中古品ケアにまで経営資源を割けない状況にあります。そこで、中古品にまつわる作業やコンサルティングを当社で請け負うことが新しいビジネスになると考え、始めたところです。

── その取り組み事例を教えてください。

藤崎 21年に千趣会と協業を始めました。同社の通販事業「ベルメゾン」会員を対象に、他社製品も含む衣料品の買い取りを行っています。検証の結果、千趣会の休眠会員の掘り起こしや企業イメージの向上につながっているという良い結果が得られています。今後、他社にも協業を拡大していけるのではないかと期待しています。

(構成=村田晋一郎・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 自動車事業の責任者をしていた時、新しいオークションの仕組みを導入しようとしましたが、うまくいかずにやめることになり、悔しい思いをしました。

Q 「好きな本」は

A 非売品ですが、創業者である父が生前書き残した言葉をまとめた『正見録』です。示唆に富んでいて、悩んだ時に読んでいます。

Q 休日の過ごし方

A 最近、筋トレを始めました。体質が少し変わったと感じています。


事業内容:中古自動車、中古デジタル機器、中古貴金属品などのオークション運営

本社所在地:東京都港区

創業:1984年3月

資本金:18億700万円

従業員数:868人(2022年6月現在)

業績(21年12月期、連結)

 売上高:367億円

 営業利益:58億円


 ■人物略歴

ふじさき・しんいちろう

 1975年東京都出身。私立暁星国際学園高校卒業、神奈川大学法学部卒業。オークランド工科大学(ニュージーランド)経営学修士。2011年1月にオークネット入社。19年専務執行役員を経て、20年3月から現職。46歳。


週刊エコノミスト2022年11月22日号掲載

編集長インタビュー 藤崎慎一郎 オークネット社長

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