経済・企業SDGs最前線

SDGs最前線⑥マテックス、断熱・遮熱優れた「エコ窓」の需要が大幅増、卸ならでは「メーカー横連携」で普及させる

マテックスの松本浩志社長
マテックスの松本浩志社長

 国連が2015年に採択した、17の目標から成るSDGs(持続可能な開発目標)。世界の企業の間で、社会課題を解決し、持続可能な社会を目指すSDGsを成長戦略の柱として取り込む動きが広まっている。エコノミストオンラインの連載「SDGs最前線」では日本でSDGsを実践し、実際にビジネスに活かしている企業を取り上げていく。第6回目は、窓ガラスやサッシの仕入れ・販売を手掛けるマテックス(東京・豊島)。同社は高い断熱・遮熱性能をもった「エコ窓」を普及させることにより、暖冷房で発生するCO2の排出量を減らそうとしている。卸売業者として販売店などに省エネ製品の啓蒙活動を積極的に実施し、自社の業績も伸ばしている。

【マテックスが実践するSDGsの目標】・目標3(すべての人に健康と福祉を)・目標7(エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)・目標11(住み続けられるまちづくりを)・目標13(気候変動に具体的な対策を)目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)

窓の省エネ化で家庭のエネルギー消費が2割超減

 全ての窓を断熱効果のある「二重サッシ」か、複数のガラスから構成される「複層ガラス」にした一戸建ての家は、そうでない家に比べて、暖房によるエネルギー消費量が約24%少ない――。環境省が約1万世帯から集めた家庭の二酸化炭素(CO2)排出データの分析結果だ。

 窓は熱の出入り口となっており、夏は家の71%の熱が窓から入ってくる。一方で冬は48%の熱が窓から逃げていくとされる。つまり、窓を省エネ化できれば、冷暖房を抑えられ、家庭のCO2排出量を減らすことができるわけだ。

 断熱性能の高い窓ガラス、特殊な樹脂製の窓枠、既存の窓枠の上から新しい枠を被せる「カバー工法」――。窓が家庭のCO2排出量削減のキーポイントであるだけに、窓ガラスやサッシメーカーは多様な商品や工法を開発している。その商品を卸売業者ならではの手法で普及させているのがマテックスだ。

 SDGsでは「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策を」などの目標を掲げる。同社の松本浩志社長は「温暖化対策はもちろん、窓の断熱性を強化すれば、屋内での急な温度変化で脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす『ヒートショック』も防ぎやすくなる」と指摘する。 

マテックスが取り扱う断熱性の高い窓
マテックスが取り扱う断熱性の高い窓

卸売業者の立場をいかし、メーカー横断的な省エネ商品の啓蒙活動

 窓やサッシのメーカーは省エネ製品を開発・生産できるが、取り扱うのは自社商品だけ。このため、自社だけで多様な省エネ商品を普及させるのは難しい。一方、卸売業者は複数のメーカーや販売店と取引するため、多くのメーカーの省エネ製品を仕入れ、販売店に薦めることができる。マテックスは卸売業者としての大きな影響力をいかして、エコ窓やエコサッシを普及させようとしている。

 例えば、毎年10月に開催し、窓・サッシメーカーや工務店、販売店の関係者など1000~2000人が参加する展示会「マテックスフェアー」では、松本社長と環境分野の有識者らが対談するなど、啓蒙活動をしている。もともとは一般的な展示即売会だったが、環境問題への関心の高まりなどを受けて「ただモノを売って業績を作るというのではなく、社会志向型の展示会に変化させてきた」(松本社長)という。

需要増で取引先も拡大、「SDGs」がエコ意識高い学生の採用にプラスに

 マテックスのSDGs戦略は業績にも好影響を与えている。環境問題への関心の高まりやエネルギー価格の高騰などを背景に、窓の省エネに向けたリフォームの需要が拡大。2006年ころに7店だった窓のリフォームを取り扱う取引先の販売店は400~500店に増加し、マテックスも大幅な増収が続いている。断熱性能を強化した窓ガラスなどの市場は世界的に拡大しており、今後も期待できそうだ。

 SDGsを重要視する姿勢は、優秀な人材の確保にもプラスになっている。少子・高齢化や労働力人口の減少を背景に国内では人手不足が続くが、同社の採用活動は堅調。「持続可能な社会づくりやカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)に力を入れていることが、学生を送り出す大学教授らに支持されており、当社の採用活動にも役立っている」(松本社長)という。

マテックスがOEM(相手先ブランドでの生産)している樹脂窓
マテックスがOEM(相手先ブランドでの生産)している樹脂窓

東日本大震災では「エコ窓エイド」で支援基金

 同社は2011年の東日本大震災時には、仕入先のメーカーや販売店と一緒に「EcoMado Aid(エコ窓エイド)」という支援基金を創設。集めた支援金を被災地に直接持っていき、復興に役立てた。被災地にも足を運び、宮城県や岩手県にある仮設住宅をまわった。多くの被災者からニーズを聞き取り、強い日差しを避けるための「日よけ」を設置するなどのボランティア活動をしたという。

それにしても、なぜマテックスは社会志向型を目指す企業となったのか。松本社長に聞くと、「『ザッポスの奇跡』(廣済堂出版)というビジネス書を読んだことがきっかけだった」との答えが返ってきた。米ザッポスは衣料品のインターネット販売会社で、何時間でも顧客からの電話に対応し、自社に在庫がなければ他社からの購入を勧める「顧客中心主義」で有名だ。本の内容に感動した松本社長は、ラスベガスのザッポス本社を直接訪問し、元CEO(最高経営責任者)のトニー・シェイ氏にも会うことができたという。

「窓から日本を変えていきたい」(松本社長)。卸売業者としての強みと社会志向型の企業への熱意と行動力。松本社長が率いるマテックスが今後、「窓の温暖化対策」をどのように普及させていくのかに注目したい。

(加藤俊・株式会社SACCO社長、編集協力 P&Rコンサルティング)

【筆者プロフィール】

Sacco社長加藤俊氏
Sacco社長加藤俊氏

かとう しゅん

加藤俊

(株式会社SACCO社長)

企業のSDGsに関する活動やサステナブル(持続可能)な取り組みを紹介するメディア「coki(https://coki.jp/)」を展開。2015年より運営会社株式会社Saccoを運営しながら、一般社団法人100年経営研究機構 『百年経営』編集長、社会的養護支援の一般社団法人SHOEHORN 理事を兼務。cokiは「社会の公器」を意味し、対象企業だけでなく、地域社会や取引先などステークホルダー(利害関係者)へのインタビューを通じ、優良企業を発掘、紹介を目指している。

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