米共和党が“脱トランプ”できない場合の“悪魔のシナリオ”とは 中岡望
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米共和党は穏健な保守主義への回帰は不可能で、党指導部は「極右」やポピュリズムに代わる新しい理念を打ち出せずにいる。
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2022年11月の米中間選挙は共和党の将来を決める選挙であった。トランプ前大統領は党予備選挙で極右のトランプ派の候補者を多数推薦した。彼の思惑は、トランプ派候補の大量の当選を背景に共和党内での地位を強固なものにして、中間選挙の勝利宣言とともに、24年の次期大統領選に出馬表明することであった。共和党指導部はこうした動きをけん制し、マコネル共和党上院院内総務は「トランプ氏が擁立した候補の質が悪すぎる」と批判していた。
だが、選挙はトランプ前大統領の想定外の結果となった。激戦区で相次いでトランプ派候補が落選した。共和党は下院では選挙前、一時60議席増といわれていたが、結果は9議席増にとどまり、かろうじて過半数を超えた。上院では1議席を失い、過半数奪回の夢はついえた。この結果を受け、共和党指導部は、敗北の責任はトランプ氏にあると批判した。トランプ氏を支持していた保守系メディア「ナショナル・ジャーナル」も、「共和党の問題はトランプ氏にある」と反旗を翻した。
共和党指導部は“脱トランプ”を画策している。フロリダ州知事選挙で圧勝して再選を果たしたデサンティス知事の人気上昇を受け、党指導部やトランプ批判派のメディアは一斉に同知事を次期大統領の有力候補と持ち上げた。
こうした動きに対して、トランプ氏は選挙結果の責任は党指導部にあると反論。同時に大統領選出馬を早々と発表して、党指導部の動きの機先を制した。党指導部はまた、トランプ氏がフロリダ州の私邸で極右人物と反ユダヤ主義の人物と会食したことを激しく批判。主導権争いは激化している。
共和党には現在、二つの問題が浮上している。まず“脱トランプ”を実現できるのかである。その場合、過激で扇動的…
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週刊エコノミスト
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