AI解析で「電話営業」の生産性を向上――会田武史さん
レブコム代表取締役 会田武史
勘や経験に頼っていた電話営業をAI(人工知能)で解析し、担当者自らが改善できるソフトを提供している。(聞き手=稲留正英・編集部)
会社名のRevComm(レブコム)はRevolution×Communicationに由来、コミュニケーションの革命を目指しています。
主要製品の「MiiTel(ミーテル)」は、電話営業やコールセンターでの担当者と顧客とのやり取りをAIが解析し、問題点を抽出、担当者が自ら顧客対応の改善点を学ぶクラウド型のセルフコーチングソフトです。日本国内で1500社以上、約4万人のユーザーが使っています。
MiiTelにはIP電話機能と顧客管理ソフトとの連携機能があり、担当者は社内の顧客データベースを参照して、パソコンから顧客の電話番号をクリックするだけで通話が可能です。
顧客との通話は全て録音され、そこから、AIが①担当者が話している時間、沈黙の時間、②顧客との会話のやり取りの回数、③顧客がしゃべり終わる前に、担当者が話し出す「被せ」の回数、④担当者と顧客のそれぞれの会話速度──などを分析し、パソコン画面上に表示します。
個々人の情報の処理スピードと会話のスピードには相関関係があるといわれています。例えば、高齢の顧客に早口で商品を説明しても理解してもらえません。逆に頭の回転が速い人にゆっくり話すとイライラされます。相手に合わせて話をすることで、顧客が担当者に親近感を持ち、成約率や満足度の向上につながります。
利益の源泉は「営業」
これまで、電話営業における担当者と顧客の会話は「ブラックボックス」でした。営業のアドバイスも「モノを売るのではなく、自分を売りなさい」というような抽象的なものばかりで、「1日100件の電話」という気合・根性論が横行していました。
MiiTelを使うと、「相手の2倍の速度でしゃべっていた」「30分の会話で120回も顧客の会話に被せていた」などの問題点が可視化され、担当者は具体的な数字に基づいて、自ら営業方法を改善できます。録音した会話から、議事録を自動で作成し、社内で共有することも可能です。導入した企業からは「成約率が56%上昇した」などの評価を得ています。
日本における最大の課題は少子化です。2000年に8600万人だった生産年齢人口(15~64歳)は、20年には7400万人に減少。日本経済の利益の源泉は「営業」であり、ここの生産性を上げない限り、約500兆円のGDP(国内総生産)を維持・拡大することはできません。
起業を考えたのは10歳の時。尊敬する祖父と父親が文具メーカーを経営しており、自分もビジネスで二人を超えようと決意したのがきっかけです。大学卒業後は商社に入社し、ウクライナなどで自動車の営業をしていましたが、6年目に自分の原体験を思い出し、起業に踏み切りました。
営業のブラックボックス問題は、言語や文化、宗教にかかわらず存在します。インドネシアでもビジネスを展開していますが、今後は北米にも進出したいと考えています。オンライン会議システムではZoomと提携、今後はその他のプロバイダーとも組めればと思っています。
企業概要
事業内容:AI活用のソフトウエア、データベース開発
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2017年7月
資本金:9億3500万円
従業員数:181人
週刊エコノミスト2023年1月10日号掲載
挑戦者2023 会田武史 レブコム代表取締役 AI解析で「電話営業」の生産性を向上