「訳あり不動産」特化で買い取り――丸岡智幸さん
ネクスウィル代表取締役 丸岡智幸
離婚などの理由によって一つの不動産を2人以上で所有することは少なくない。そうした「訳あり不動産」に特化した買い取りを手がける。(聞き手=加藤結花・編集部)
売却しづらい「訳あり不動産」に特化した買い取り事業を行っています。具体的には、一つの不動産を2人以上で所有する共有持ち分の不動産や、建築基準法の改正で現在では違法建築物となってしまった再建不可の不動産など、一般的な不動産会社では買い取りを断られてしまうような権利関係の複雑な不動産を扱っています。
相談が多いのが共有持ち分の不動産で、夫婦共有名義で2分の1ずつ家を購入した後に離婚したケースや、たび重なる相続により持ち分が数十人に細分化したりしているケースです。
訳あり不動産を所有する人たちには、身内でさんざん話し合ったけれど自力での解決が難しかったり、利活用できない物件に固定資産税を払い続けているなど、社会問題化していると感じます。
当社では、こういった不動産を資産価値や採算性などを総合的に査定して買い取ります。その後、権利関係などの問題を解決したうえで、不動産会社などに売却しています。権利関係の問題などはややこしく、販売まで1物件当たり平均で半年程度かかります。大手の不動産会社が積極的に手を出さない分野であることを逆手に取って、あえて「訳あり不動産特化」という看板を掲げています。
20年10月に訳あり不動産特化の事業を始めました。現在は月90件程度の問い合わせがあり、ここ1年で150件程度を買い取りました。また、22年2月からは空き家や訳あり不動産を個人間売買できるオンラインマッチングサイト「URI・KAI(ウリカイ)」の運営もしています。こちらは情報の掲載は無料で、1物件当たり成約時のシステム利用料(買い主5万円、売り主7万円)のみで提供しています。
なるべく買い取りたいとは思うのですが、立地などの条件で当社が買い取り可能な物件は全体の1~2割程度。「URI・KAI」を始めたのは、買い取りできない不動産にも買い手が現れてほしいという思いからです。
大阪にも拠点開設へ
前職で投資用アパートの販売経験があったので、設立当初は、投資用不動産の売買仲介をメインに手がけていました。しかし、投資用不動産販売は金融機関の融資に頼る必要があるなど、立ち上げたばかりの会社が優位に事業をするのは難しいため、外部環境に影響されないビジネスモデルを探していました。そんな時、顧問弁護士から共有持ち分で困っている顧客がいるとの相談を受けたことをきっかけに、訳あり不動産の多さに気付き、事業を始めました。
事業への反響が大きくなってきたこともあり、23年春に大阪にも拠点開設を予定しており、23年中の福岡への進出も検討しています。社会問題化している不動産問題解決のためにも、事業を拡大していきたいです。
企業概要
事業内容:不動産の買い取り・販売
本社所在地:東京都港区
設立:2019年1月
資本金:5000万円
従業員数:10人
週刊エコノミスト2023年1月24日号掲載
丸岡智幸 ネクスウィル代表取締役 「訳あり不動産」特化で買い取り