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週刊エコノミスト Online 書評

大統領選を意識か? 共和党のホープ、デサンティス知事の自伝が話題 冷泉彰彦

 2024年の米大統領選へ向けて、共和党ではトランプ前大統領が早期に立候補を表明。これにヘイリー元国連大使が続いている。だが、共和党内で本命視されているのは、やはりフロリダ州のロン・デサンティス知事だ。その自伝が発売され、話題になっている。

 タイトルは『自由であることへの勇気(“The Courage to Be Free”)』といかにも共和党のスローガンというもの。表紙には演説中の知事の笑顔が配されバックに星条旗がはためく。表紙を見ただけで、大統領選を意識した出版であることは明らかだ。

 では、この題名がキーワードかというと、それは違う。本書のキーワードは「“Florida’s Blueprint”(フロリダという青写真)」であり、そして「“Make America Florida”(アメリカをフロリダ化しよう)」である。つまり、自分が知事としてフロリダで実施したことを、大統領になって全米で実現しようというのだ。

 その内容とは、コロナ禍においては「マスクやワクチンなどの感染対策」を「義務化するのを禁止」し、また「LGBTQの権利保護に反対」し、行き過ぎた権利保護をしたとして「ディズニーに対する補助金をカット」するといった行動である。また、不法移民の多数を、バスに乗せてニューヨークなどのリベラル州に「送りつけた」ことも、自分の功績だとしている。

 内容は保守イデオロギーの宣伝に終始しているだけでなく、自分のルーツは「リトルリーグの少年野球」にあるとして、成長後は「エール大学の野球部キャプテン」を務めたエピソードなど、アメリカ人の琴線に触れるようなアピールも欠かしていない。何よりも、多くの章では聖書の文言を掲げてみたり、また使用する英語は中学生レベル以下の平易な内容とするなど、自分の支持層を意識した作りにもなっている。

 デサンティス知事は、共和党の主流派とは一線を画し、アメリカのウクライナ支援の削減を主張するなど、トランプ派に近い立ち位置を取っている。そのために、トランプ本人からは煙たがられているが、主流派に近いヘイリー候補とは対立関係にある。本書の出版を契機に、トランプ派の支持が得られるか、知事の姿勢は正念場に来ている。

(冷泉彰彦・在米作家)


 この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2023年4月11・18日合併号掲載

海外出版事情 アメリカ 共和党のホープ、デサンティス知事の自伝 冷泉彰彦

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