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経済・企業 挑戦者2023

醤油を食べ物に合わせて選ぶ楽しさ――高橋万太郎さん

たかはし・まんたろう 1980年前橋市生まれ。立命館大学経済学部卒業。キーエンス入社。精密光学機器の営業に携わり、2006年に退職。07年に伝統デザイン工房を設立。「職人醤油」のブランドで全国の醤油の販売を行う。(撮影 武市公孝)
たかはし・まんたろう 1980年前橋市生まれ。立命館大学経済学部卒業。キーエンス入社。精密光学機器の営業に携わり、2006年に退職。07年に伝統デザイン工房を設立。「職人醤油」のブランドで全国の醤油の販売を行う。(撮影 武市公孝)

伝統デザイン工房代表取締役社長 高橋万太郎

 日本の醤油は個性豊かだ。作られる地方や製法によってさまざまな味がある。全国から集めて食べ物に合わせて選ぶと楽しい。(聞き手=平野純一・編集部)

>>連載「挑戦者2023」はこちら

 全国の醤油(しょうゆ)の蔵元から集めた103種類の醤油を100ミリリットルの小さな瓶で売っています。ブランド名は「職人醤油」。販売方法は三つあり、インターネット販売、前橋市の本店と東京の銀座松屋での店舗販売、スーパーや雑貨店などへの卸販売です。

味や色で6種類に分けて用途を説明
味や色で6種類に分けて用途を説明

 日本人にとって醤油は生活に欠かせないものですが、一つの家庭に味の違う醤油が何種類もあるものではありません。ただ、食べるものに合わせて醤油を選んでみてはと提案しています。例えば、お刺し身やカルパッチョ、白身魚のムニエルなどは薄口の醤油、逆に牛肉のステーキや赤身の刺し身には濃厚な溜(たまり)醤油という具合です。魚料理の時は白ワイン、肉料理の時は赤ワインを選ぶ感覚に似ています。

 この醤油はどんな食べ物に向いているのかのイラストを瓶に巻きつけて販売する工夫もしています。刺し身用、卵かけごはん用、ギョーザ用、ステーキ用など24種類あります。

木桶仕込みの醤油を大切に

 大学卒業後は測定器や精密機器を製造するキーエンスに勤めましたが、いずれは独立して事業をという思いがあり、3年で退職しました。日本の伝統産業にかかわることで起業したいと決め、何が有望か全国を探して回りました。

 最初から醤油と決めていたわけではなく、ろうそく、食器、仏壇などさまざまな職人を回って話を聞きました。共通しているのは「自分たちはいいものを作っている自信がある。ただ売れない」ということでした。ならば、私にできることがあるのではと考えました。

 300項目くらい挙げたリストから最終的に選んだのが醤油でした。日本にはおよそ1100の醤油の蔵元があり、これまでに400以上回っています。

 事業はインターネットで8種類の醤油を販売するところから始めました。ホームページ作りはすべて独学です。最初はほとんど売れなかったですね。ただ、売る努力よりも商品数を増やすことを考えました。2010年に50種類を超えたころからどんどん売れるようになりました。1本の価格は450~600円。いま年間30万本を販売しています。

 伝統的な木桶(おけ)仕込みの醤油を大切にしています。大量生産で作る醤油は金属製のタンクを使い、木桶で作られる醤油は全生産量の1%くらいです。しかしうちで扱う醤油の6割は木桶仕込みです。木桶醤油はビールでいえばクラフトビールです。味も香りも蔵の個性が出ます。

 銀座松屋のお店には、外国人のお客さんもたくさん訪れます。味の違いをすぐにわかってもらえるように英語のパンフレットも作りました。今は日本食ブームですし、外国人も醤油に興味があるようです。こんなにたくさんの種類があることに驚きます。

 今後は海外展開も積極的に進めたいと考えています。木桶仕込みの26社で、3月に開かれた日本の食品の輸出を促進する「Foodex Japan 2023」にも参加しました。日本の醤油の良さを外国人にも広めたいと思っています。


企業概要

事業内容:全国の醤油の販売業

本社所在地:前橋市

設立:2007年3月

資本金:500万円

従業員数:10人


週刊エコノミスト2023年4月25日号掲載

高橋万太郎 伝統デザイン工房代表取締役社長 醤油を食べ物に合わせて選ぶ楽しさ

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