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2024年大学入試:国公立・私立327大学4大模試最新難易度 文系編 難関大で際立つ「初志貫徹」

「サンデー毎日11月5日号」表紙
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 経済・経営・商の人気が回復

 秋の深まりとともに、一般選抜に向けた機運が高まってきた。最終的に志望校を詰めるこの時期に、文系、理系、医療系の3回に分けて、難易度と志望状況について見ていこう。第1回は文系学部の動向について検証する。

 一般選抜の倍率は、18歳人口の減少と呼応して右下がりが続いてきた。18歳人口が3万人強の減少となる2024年度入試(24年4月入学)は、その傾向がより強まりそうだ。第1回駿台・ベネッセ大学入学共通テスト模試の受験者指数は、国公立大が97で私立大が94となっている。

 文系と理系ともに志願者の減少が見込まれるが、一律に減少するわけではなく、難易度帯により異なりそうだ。東進ハイスクール広報部長の市村秀二氏は言う。「25年度から新課程入試を控えているため、24年度は安全志向になるという予想もありましたが、難関大志望者に関してはチャレンジ志向が見られます。一般選抜の競争が緩和されていることもあり、行きたい大学が決まっている受験生は、初志貫徹する傾向が強いようです」

 難関国立大はやや減少傾向のようだが、易化はないと話すのは、駿台予備学校入試情報室部長の石原賢一氏だ。

「旧帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関国立10大学の指数は、国公立大全体をやや下回りますが、学力的にギリギリの層が志望を下げているのでしょう。志望度の強いコアな層は残っているので、難易レベルは下がっていないと思います」

 ちなみに私立大は、早慶上理(早稲田、慶應義塾、上智、東京理科)、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関関同立(関西、関西学院、同志社、立命館)を合わせた難関私立大グループは私立大全体の指数を上回る。一方、難易度が下がるにつれ、志望者の減少傾向が強くなっているようだ。

 次に、文系学部に絞った動向を見ていこう。24年度入試は、これまでの理系人気がやや沈静化し、文系学部の志望者が戻ってきたことが特徴だ。系統別志望状況を見ると、国公立大では経済・経営・商と社会の指数が100を超えており、私立大も全体の指数を上回っている。

「コロナ禍が明け、つぶしが利く学部ということで経済・経営・商の人気が上がっているのでしょう。社会は地方を中心に社会福祉系の資格を目指す受験生の影響が考えられます」(駿台の石原氏)

 経済・経営・商の志望状況が好調な中、ベネッセコーポレーション学校カンパニー教育情報センター長の谷本祐一郎氏は、横浜国立大に注目する。

「横浜国立大は経済の志望者が大幅増で経営も増えています。コロナが明けて受験生の地域間の移動が活発になったこと。さらに、現役志向の強まりにより、東大や一橋大などの難関大から志望変更する受験生もいるようです」

 私立大も大規模有名大で志望者増の大学が多いようだ。ベネッセの谷本氏が続ける。「慶應義塾大の経済と商、明治大・経営、同志社大・経済、立命館大・経営などは、2年連続で模試の志望者が増加しています。一般選抜の倍率アップが見込まれるので、注意が必要でしょう」

 社会科学系では、昨年に続き法の志望者が減っている。就活における大学生の売り手市場が続く中、資格志向が薄らいでいる影響と見られる。それでも、個別に見ると、難化含みの大学がある。明治大・法は、一般選抜の募集人員が375人から315人と60人減少するところに志望者は増加傾向なので、倍率が上がりそうだ。

 教員養成・教育も志望者の減少が続いてきた系統だが、国公立大の指数は前年並みとなり、下げ止まったように見える。駿台の石原氏は言う。

「モンスターペアレントなど保護者と教員の軋轢(あつれき)は、都市部を中心に起きていて、地方はまだ教員は尊敬される存在です。就職先が少ないこともあり、地方の志望者が持ち直しているのでしょう」

 国際系は続く志望減 女子の「実学志向」も

 比較的堅調な学部が多い文系学部の中で、外国語や国際関係は志望者が戻らない。その要因の一つは留学問題。コロナ禍は過去になりつつあり、海外留学は元に戻っているが、円安や国際情勢の混乱で相変わらず留学に出にくい状況が続いている。河合塾研究開発本部の主席研究員、近藤治氏は、別の要因を指摘する。

「かつて、文系の女子なら教養を身に付けるなどの理由で文・人文系と、あまり根拠なく勧められるケースも多かったですが、今は、社会科学系など実学分野を目指す女子が多くなっている。そうした女子の志望の変化もこの系統の志望者減の一因になっていると思います」

 学部系統の人気は下がっても、グローバル人材が求められている社会環境は変わっていない。そうした状況を受けて、河合塾の近藤氏は、こう話す。

「外国語や国際関係の志望者は4年連続で減っていることもあり、一般選抜の志願者は、当時の半数近くになりそうです。グローバル人材の活躍の場は大きく広がっています。この系統の志望者はチャンスだと思います」

 女子の志望動向の変化は、家政などを含む生活科学や人文科学の志望者が大きく減少する要因にもなっているようだ。

 ここまで、志望者が戻りつつある文系学部全体の動向について見てきた。志望校の難易度については、「国公立・私立327大学4大模試最新難易度」で確認してほしい。

 10月24日発売の「サンデー毎日11月5日号」には、「国公立・私立327大学4大模試最新難易度」を掲載しています。ほかにも「始まった崩壊カウントダウン もう『年内解散』は無理 物価高無策で岸田首相はこうして辞任する!」「40代バツイチ女性婚活ルポ 激変!ニッポンの『恋愛』『結婚』」「中高年に大ブーム 『行楽登山』ここに気をつけろ!」などの記事も掲載しています。

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