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「給食」は総合芸術だ! 「おいしい給食 season3」主演・市原隼人さんインタビュー 10月より順次放送スタート

市原隼人さん
市原隼人さん

 これを観ると元気になる!

 本誌の「慧眼」を誇りたい。ついに第3弾だ。給食マニアの中学教師と教え子が「バトル」を繰り広げるテレビドラマ「おいしい給食 season3」が10月から始まる。本誌は2021年12月に特集。満を持して主演の市原隼人さんのインタビューに臨んだ。

「おいしい給食」は19年にドラマの第1期が始まった。特徴的なのは、在京キー局に属さない独立局中心に放送されてきた点だ。それでも人気を博し、20年は映画の第1弾、21年はドラマの第2期、22年は映画の第2弾が放送・上映された。そして、23年はドラマ第3期だ。制作費は潤沢(じゅんたく)とは言えない独立局系ドラマが、ここまで続くのは異例だ。

 ストーリーは単純と言えば単純。市原さんが演じる給食マニアの中学教師・甘利田幸男が、給食好きの教え子と「いかにおいしく給食を食べるか」というバトルを繰り返す。器や服や小物、食材の組み合わせ、さらに心の持ちよう……。人事を尽くしての戦いだ。

 これまで〝ライバル〟は佐藤大志さんが演じる神野ゴウだった。映画第2弾でゴウは中学を卒業し、甘利田は北海道・函館に転勤することに。そして「はるばる~」来た函館で2度目の冬を迎える甘利田の前に、突如覚醒した新たなライバルが出現したようだ。

   ◇   ◇

―続編はゴウが教師や文部科学省の官僚になり、給食の「現場」に戻ってからかと思っていました。こんなに早く見られるなんて。

市原隼人 奇跡です。企画・脚本の永森裕二さんはじめ監督やプロデューサーにお会いしたのが約5年前でした。原作がないからこそ「0から1を作る」ことができる。面白い、と思いました。移動中の新幹線で台本を読み始めたら止まらなくなったことを覚えています。「唯一無二」の世界観が作られていて、演じる人間によってガラッと作品のテイストが変わる。二つ返事で「やらせていただきたい!」と作品に入りました。

―一見、厳格でクールな数学教師が給食となると、ひょう変(詳しくはドラマを見てください)してしまう。あの甘利田像はどう築いているのでしょうか。

市原 第1期の撮影前に出演者やスタッフが台本を読む「本読み」の際に、自分の中の〝甘利田像〟を持っていったんです。すると綾部真弥監督も「これ、面白いね」と言ってくださり「じゃあ、それでいきましょう」と。

 眼鏡も大きいのとか、いろいろ試したのですが、近くにいたスタッフの方がかけていた眼鏡を「ちょっと貸してください」と借りて着けたら「すごくいいね」となって同じ眼鏡を買ってきたり。腕時計も物語の設定が1980年代なのでアンティークものを探しました。これもスタッフの着けていた腕時計が目にとまったのです。「これ、おじいちゃんの形見なんです」と言う助監督のおじいさんの形見の腕時計を貸してもらったり……。ネクタイもプロデューサーの方が60本ぐらい持ってきて「当時は細いのが流行(はや)っていたね」と合わせたり。もう、「総合芸術」なんです。

―ここまで長く愛される理由をどう思われますか。

市原 僕も分からないんですが、やはり現場の秩序とかプロセスに〝秘密〟があるような気がします。撮りためた映像をみんなで観たり、顔合わせや本読みやリハーサル……など全てにおいて、ものづくりの順序を踏んでいる。お客様のために作品の意義を深めようという作業ができる。本当に貴重な作品だと思います。

―職員室で後ろに映っている先生役が身近な方だったりもしますね。

市原 そうなんです(笑)。現場って、本来そうあるべきなんです。撮影、照明、衣装、メイク、監督、助監督、美術……。誰一人欠けても雰囲気が変わってしまうんです。信頼があるからこそ部署を飛び越えて参加し、総合芸術の上をいくものが生まれてくるんです。そこには作品に対するみんなの「愛」がある。それは「おいしい給食」ならではのものなのです。

 「僕もこの作品に救われました」

―ドラマ第1期なら甘利田先生が「大人はたとえ相手が子どもであっても、負けを認めなければならない」。第2期なら教育委員会のお偉方役の森田順平さんが「(給食が好きと)言えないから、言える人を攻撃するのは違いますよ」など、現代に通じるセリフが印象的です。いわゆる「金八先生」の「卒業式前の暴力」シリーズで、堅物の数学教師・乾先生役だった森田さんが登場するのも、本当に絶妙な配役です。

市原 「給食」はある意味、社会派ドラマでもあるんです。本当にポップなテイストの中に「これでもか」というぐらい大事なメッセージを、たくさん発信している作品なんです。

―最後に『サンデー毎日』の読者にメッセージを。

市原 僕もまだまだ若造です。悔しい思いをし、悔し涙を流すこともあります。でも、この作品に救われました。「信じて良いもの」が一つ見つかりました。

 読者の皆さまには、ぜひ観ていただき、いろんなことを感じていただきたいです。世の中、捨てたもんじゃない。笑われようが、滑稽(こっけい)な姿を見せようが、「好きなものは好き」と言い、純粋に生きていく甘利田の姿を見て、「人生もっと楽しんでいいんだ」と思っていただければ幸いです。

   ◇   ◇

「体重を10㌔絞った」「和食の所作を学びました」「ワイシャツは少しダサく見えるようにランニングは透けるように」……。市原さんの作品への愛や〝作り込み度〟に関するエピソードは枚挙にいとまがない。ただ、一俳優の代表作というものは、こうして形作られていくのだと知った。

「行くぞ」。ドラマと映画の各シリーズのヤマ場で甘利田が言うセリフだ。「給食で『行くぞ』って何?」と思うが、一見「カオス(混沌(こんとん))」の中に「行くぞ」がハマる「秩序」ができるのが「おいしい給食」なのだ。

 事前情報を見る限り「完食主義」という言葉が散見される。函館行きのきっかけとなった「いかめし」も気になる。そして「行くぞ」は、いつ飛び出すのか。10月、新たな〝バトル〟の火蓋(ひぶた)が切られる。

本誌・飯山太郎 撮影/高橋勝視

「サンデー毎日10月15・22日合併号」表紙
「サンデー毎日10月15・22日合併号」表紙

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