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2024年中学入試:271学習塾アンケート 首都圏オススメ私立中学ランキング 「コロナ禍後」も高まる信頼 エキスパート「推し」学校は

京華中学・高等学校
京華中学・高等学校

 中学入試の志望校を決める時期だ。大学合格実績や偏差値、通学時間などを考えると迷ってしまう保護者も多いだろう。そんな時に頼りにしたいのがエキスパートの意見だ。学習塾の塾長、教室長が勧める中高一貫校はどこか。

 首都圏の中学受験の志願者は9年連続で増加している。首都圏中学模試センターの集計では、2023年入試の受験者数は約5万2600人で、前年より約1500人増加した。受験率も17・3%から17・9%にアップしている。

 私立中人気は来年も続くのだろうか。本誌と大学通信は首都圏の学習塾の塾長・教室長に緊急アンケートを実施し、271学習塾から回答を得た。

 順に見ていこう。まず来年入試の志願者数について聞いた。今年と比べて来年は「少し増える」が最も多くて57・9%、次が「変わらない」で28・8%、「大きく増える」が4・1%だった。「今年以上」という回答が9割を超えた。来年も中高一貫校の人気は引き続き高いと見られており、入試が厳しくなりそうだ。

 私立中人気の理由についても聞いた。トップは「私立の面倒見の良さ」で50・9%、次が「公立教育への不信」で50・2%、「私立の施設・設備の優位性」47・2%、「大学合格実績が公立に勝っていること」41・7%、「高校入試がないゆとり教育」40・6%の順だった。公立と比較して私立教育への信頼が高いのが分かる。コロナ禍での休校時、私立校は生徒の学力を低下させないためにオンライン授業などを素早く実施し、保護者の信頼を得た。以後、私立中人気が高まっている。

 さらに、アンケートでは項目別に学校を選んでもらった。5校連記で記してもらい、最初の一貫校を5ポイント、次を4ポイント……とカウントして集計した。

 まずは「面倒見が良い」を見ていこう。トップは14年連続で京華だ。2位は駒込、3位は常総学院と土浦日本大中教、桜丘だった。京華は125年以上の伝統がある男子校で、元々、面倒見の良さでは定評がある。「生徒が無理なく学力・精神力を向上させている」と学習塾が評価している。24年度から京華女子中高が移転し、男子校の京華と共学校の京華商業高の3校が同一キャンパスになる。学校は別だが、文化祭などの行事や英検などの特別講座、一部の部活が合同で実施される予定だ。男女別学の良さを保ちながら、互いの交流も深められ、人気アップが予想されている。

 「大学合格実績」首位 京華が2年ぶり復帰

「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」のトップは渋谷教育学園幕張、2位が京華、3位が豊島岡女子学園、4位が城北、5位が市川だ。トップ上位校から中堅校まで幅広く学校が選ばれているのが特徴だ。安田教育研究所代表の安田理さんがこう話す。

「豊島岡女子学園は大学合格実績が高いことから勉強ばかりしているイメージが強いですが、クラブ活動が全員参加だったり、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)にも指定されています。受験勉強だけでなく、多様な取り組みから学校生活が充実していると感じる保護者が多いのでしょう」

「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」のトップも京華だ。昨年の2位から返り咲いた。2位は駒込、3位は常総学院、4位は昌平、5位は安田学園だった。いずれも近年合格実績が伸びている学校だ。

 京華の今春の大学合格実績は東京工業大・電気通信大・横浜国立大各1人、早稲田大5人、慶應義塾大1人、東京理科大10人、明治大14人など。駒込は東京学芸大5人、筑波大3人、北海道大・千葉大・東京芸術大各2人、東京工業大1人、早稲田大11人、慶應義塾大7人、上智大10人、東京理科大30人、明治大36人などだ。ともに難関大合格者が増加傾向だ。

「最近、大学合格実績が伸びていると思われる」を見てみよう。トップは昌平、2位は広尾学園、3位は本郷、4位は駒込、5位は大宮開成、渋谷教育学園幕張、洗足学園だった。昌平の今春の大学合格実績を10年前と比較すると、筑波大3人→9人、埼玉大4人→7人、早稲田大9人→18人、慶應義塾大0人→5人、上智大1人→7人、東京理科大12人→40人、明治大12人→25人など増加している。広尾学園は東大0人→9人、京大0人→3人、東京工業大1人→6人、早稲田大15人→85人、慶應義塾大13人→76人など。国内だけでなく、海外大合格実績も伸ばしているのが特徴だ。本郷も東大7人→14人、早稲田大90人→123人、慶應義塾大48人→85人など大きく伸長した。中学受験情報誌『進学レーダー』編集長の井上修さんが言う。

「洗足学園は東大に2年連続で20人以上合格し、学力が安定してきました。今後も伸びが期待される女子校の一つです」

「グローバル教育に力を入れている」だ。トップは三田国際学園、2位は八雲学園、3位は広尾学園、4位は昌平、5位は公文国際学園だった。三田国際学園はネーティブ教員が31人と多く、授業だけでなく進路指導や課外活動といったさまざまな教育プログラムで、生きた英語に触れることができる。国内の難関大だけでなく、海外大進学者も多い。八雲学園は米国に研修施設を持ち、全員参加の語学研修や希望者対象の留学を実施。さらに国際私立学校連盟のラウンドスクエアに加盟し、世界の学校と交流している。

「理数教育に力を入れている」だ。トップは昨年に引き続き芝浦工業大柏、2位は豊島岡女子学園、3位は東邦大付東邦、4位は宝仙学園(理数インター)、5位は芝浦工業大付と広尾学園だった。井上さんが話す。

「芝浦工業大、工学院大、東京電機大、東邦大など理工系大学の付属校が多数入っています。理数系の専門的な高大連携教育への期待の表れです。また広尾学園には医進・サイエンスコース、江戸川学園取手には医科ジュニアコースがあり、理系に特化した教育が評価につながっています」

 今年は開成と桜蔭がランクインした。両校とも新校舎が完成し、普通教室はもちろん特別教室や「ラーニングコモンズ」も充実した。桜蔭には理科教室が集まった理科フロアがある。最近は女子校でも理系志望者が増えているという。

「探究学習に力を入れている」だ。トップは市川、2位は足立学園と山脇学園、4位が麗澤、5位が順天だった。元々、私立校は探究学習が盛んに行われている。そのため今回のランキングでもポイント差が少なく、どの学校がトップでもおかしくない。各校では長年の経験に基づいた独自教育に工夫を凝らしている。市川ではリベラルアーツ教育を基本に、SSHの課題研究、有識者を招いての多彩なジャンルの土曜講座、市川アカデメイア(対話型の古典教養セミナー)などを実施し、興味があることを自主的に学ぶ姿勢を育てている。足立学園は中学で、人のために活躍できる人材となる志を育てる〝志共育〟を実施し、高校では〝探究総合〟で答えのない課題に向き合い、探究力や課題解決力を養っている。

 求められるのは客観的に我が子を見る目

「保護者に人気がある」のトップは渋谷教育学園幕張だ。2位は早稲田実業、3位は中央大付、4位は市川、5位は栄東だった。上位進学校の他に、早慶やMARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)を中心に難関大付属校が13校も見られるのが特徴だ。

 安田さんはこう見ている。

「進学校では、保護者は将来の大学進学への不安から常に成績が気になります。付属校だと進路がほぼ決まっているのでストレスがなくゆったりと構えていられます。それで人気が高くなっているのではないでしょうか」

 中学入試では大学付属校人気が続いていたが、難度が高くなり落ち着いてきた。今後は進学校人気がアップしそうだという。

「生徒や保護者に勧めたい」のトップは駒込、2位は京華、3位は城北、4位は山脇学園、5位は聖光学院だった。以前は、上位難関校ばかりだったが、最近は面倒見の良い中堅校が増えている。中学受験をする家庭が増え、幅広く志望校を探すようになった。そのため、塾などの先生はいろいろな学校を調べている。その中から合格の可能性が高い学校を選び、教え子に進めているようだ。

 志望校選びで保護者が重視している項目も聞いたも。重視しているのは「大学合格(進学)実績(付属校含む)」で85・2%、次いで「通学の交通の便」65・3%、「偏差値」60・1%だ。以下は「校風」「教育方針」「塾の先生の意見」「立地環境」「男子校・女子校・共学校」の順となった。さらに保護者が最も重視する項目でも、トップは「大学合格実績」で同じだった。進学校の場合はもちろんだが、大学付属校を狙う場合も、併設大学にどのように進学できるのか、条件をチェックしておきたい。希望者全員が進学できる学校もあれば、進学人数枠が決まっている学校などさまざまだ。さらに併設大にどのような学部・学科があるか、当然チェックしておかなければならない。いざ進学というときに、子どもが希望する学問が学べないようでは元も子もないからだ。

「伸びる生徒の保護者の共通点」についても聞いた。トップは「塾(教師)を信頼し、聞く耳を持っている」の46・1%、次いで「子どもとのコミュニケーションがよくとれている」44・6%、「子どものことをよく見て、適性や能力を把握している」44・3%だ。その次に36・2%で「子どもを信頼している」「親と子の距離感が適切」「自分の子どもを客観視できる」の三つが並ぶ。いずれも子どもとの向き合い方を示すものだ。中学受験では、客観的な目で子どもを見て、冷静に志望校を選ぶことが重要なようだ。

 来年も中学入試の人気が継続し、厳しい競争が予想される。確実に合格を得るために、エキスパートの意見を参考にして、子どもに合った学校を見つけてほしい。

 9月26日発売の「サンデー毎日10月8日号」には、各ランキング表が掲載されています。ほかにも「ジャニーズ性加害事件と日本社会の民度 近田春夫×田中康夫×松尾潔/ジャニーズ問題とメディア その『侵蝕と加担の構造』をえぐる」「立ちそばは何で美味いのか 鉄道発祥の地、横浜・桜木町で今春3月閉店も9月に再開 祝創業123年『川村屋』」「東進ハイスクール調査 ダブル合格、どっちに行く!? 全体は慶應優位 学部別は早稲田『逆転』」などの記事も掲載しています。

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