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2024年大学入試:全国242私立大推薦入試情報 新課程を控え「安全志向」に ニーズが高まる「年内入試」

「サンデー毎日10月15・22日合併号」表紙
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 9月からの総合型選抜を皮切りに、2024年度入試(24年4月入学)は始まっているが、本格始動は、一般選抜と同程度の入学者を選抜する11月からの学校推薦型選抜。その活用法について、実施大学一覧とともに見ていこう。

 私立大の一般選抜の定員が減り続けている。総合型選抜や学校推薦型選抜といった、いわゆる年内入試で入学する学生の割合は60%を超えているのだ。

 一般選抜の難易度がクローズアップされがちな難関大も例外ではない。付属校からの持ち上がりや指定校推薦も含まれるが、早稲田大に年内入試で入学する学生の割合は、03年度の30%から23年度は43%に上がっている。2人に1人が年内入試で入学しているのだ。同時期に慶應義塾大も35%から43%に上がっている。

 23年度の年内入試の割合を見ると、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)が概(おおむ)ね30%強で、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)は40%前後。準難関大では日本大と京都産業大が50%前後、駒澤大と近畿大、龍谷大が40%前後など、高い割合になっている。

 年内入試は早期に合格が決まることから、コロナ禍で受験生のニーズが高まっていった。大学入試情報の分析を行っている豊島継男事務所の調査によると、前年を100とした時の23年度の総合型の志願者指数は108・0(9月18日現在の集計値)で、公募制の学校推薦型は100・5。両方式を合わせると102・9だった。学校推薦型の指数が低いのは、合格したら入学を確約する専願制の大学が多く、複数出願がしにくいためだ。

 もっとも、志願者が増えたからといって、年内入試が難化したわけではない。少子化の影響で大学も早期に合格者を確保したい。そのため年内入試の合格者を増やしているので、倍率は事実上、前年を下回っているのだ。

 24年度入試でコロナ禍の影響は小さくなったが、年内入試が注目される新たな要因がある。代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員の坂口幸世氏は言う。

「25年度からの大学入試は、新課程で学んできた受験生が中心になります。そのため、現行課程で学んだ今年の受験生は、24年度中に大学を決めたいという思いが強くなるでしょう。そうなると、早く安心したいという気持ちの高まりから、年内入試の増加傾向がさらに強まると見ています」

 多くの大学で志願者増が見込まれる。しかし、24年度も合格者を増やす大学が多くなると見られており、倍率が極端に上がることはなさそうだ。

 年内入試の中でも指定校制と公募制を合わせた学校推薦型の占有率は大きく、入学者に占める割合は、一般選抜と同じ4割。そんな一般選抜と並ぶ入試方式である学校推薦型の状況について、詳しく見ていこう。

 公募制の学校推薦型は大半の大学が実施しており、社会科学系や文・人文系、理工系はもちろん、医歯薬系や獣医学系、芸術系など、あらゆる学部系統が網羅されている。大学の難易度も幅広く、難関大から一般的な大学まで実施しているので、受験生の志望校選択の幅は広い。

 学校推薦型のメリットは、一般選抜では実力が発揮しにくい受験生にもチャンスがあること。

「学校推薦型は、高校生活におけるあらゆる学びを多面的に評価する入試。志望校が求める推薦条件に見合う活動をしてきた受験生は、利用する価値があります」(予備校関係者)

 学校推薦型は一般選抜より科目負担が軽く、小論文や面接などで合否が決まることが多い。例えば慶應義塾大・文の自主応募推薦は、評定平均値4・1という壁をクリアすれば、自己推薦書などの書類審査と理解力や文章力を問う小論文形式の総合考査で合否が決まる。同志社大の大半の学部は、出願条件を満たした上で、書類審査および面接と小論文で合否判定をする。もちろん難関大は出願要件のハードルが高く、小論文などもハイレベルな思考力や学力が求められる。難関大の学校推薦型は、一般選抜で合格できる学力がないと厳しいと言われるほどだ。

 慶應義塾大や同志社大以外にも学習院大や上智大、東京理科大、青山学院大、明治大、法政大、関西大などの学校推薦型の出願が間に合う。これらの大学の一般選抜は高倍率になるが、学校推薦型は一般選抜より低く抑えられることが多い。出願要件が厳しいため、出願できる受験生が限られるためだ。

 近年は、女子限定の学校推薦型を導入する理工系大学が増えている。芝浦工業大や愛知工業大、大阪工業大、広島工業大など、女子だけの学校推薦型を実施する大学では、男子がいない分、倍率が抑えられるので、理系学部を目指す女子は受験機会の拡大として活用したい。

 学校推薦型でも、学力試験を中心に選抜する大学もある。そうした大学は関西に多く、京都産業大や龍谷大、追手門学院大、大阪工業大、近畿大、摂南大、阪南大、神戸学院大などが実施している。龍谷大の場合、文系型は英語と国語、理系型は英語と数学または理科が課される。他大学も同様に、2教科の学科試験が主流で、一般選抜と同じ対策で臨めるメリットがある。

 科目の負担は軽いが「思考力」も問われる

 学校推薦型は専願制の大学が多い中、前出の関西の大学は、他大学との併願を認めているケースが大半。これらの大学以外では、獨協大や日本工業大、桜美林大、大正大、昭和薬科大、中京大、京都橘大、大阪学院大、桃山学院大、流通科学大、九州産業大、福岡工業大などが、複数大学の併願が可能だ。

 最後に、学校推薦型を受ける心構えについて、前出の代ゼミの坂口氏に聞いてみた。「原則として学校推薦型は、たくさん受けるものではありません。本当に入学したい大学なのか、入学したいという気持ちや、適性を大事にして志望校を決めてほしいですね。新課程入試を前に落ち着かない年になるからこそ、この当たり前な心構えが、例年以上に重みを増すと思います」

 学校推薦型がだめだったとしても、倍率が下がり続けている一般選抜が残っている。現役生は一般選抜の当日まで学力が伸びると言われている。一般選抜という保険があるので、学校推薦型では本当に行きたい大学を選びたい。

 10月3日発売の「サンデー毎日10月15・22日合併号」には、「全国242私立大推薦入試情報」を掲載しています。ほかにも「ドリーム対談 里見浩太朗(86)×坂東彌十郎(67) 2人の水戸黄門が『時代劇』『歌舞伎』を語り尽くす」「ジャニーズ性加害問題が突き付けたもの 二人の識者が語る これからどうなる、タレントと芸能の行方」「認知症治療の第一人者・新井平伊医師が教える いますぐできる!脳の寿命を延ばす方法」などの記事も掲載しています。

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