子育てアプリで誰も一人にしない――甲田恵子さん
AsMama代表取締役CEO 甲田恵子
仕事、育児、家事、介護。全部を1人が背負い込んでいる日本。そうした社会を変えていく。(聞き手=和田肇・編集部)
子供の送迎や託児、子供服などの貸し借り、食事や外出のお誘いなどができる独自開発の専用アプリ「子育てシェア」(SNS)を運営しています。このほか生活や子育ての地域交流、施設イベントの企画・運営なども行っています。「子育てシェア」は、登録・手数料が無料で、万が一の事故などに備えて保険も当社で付けています。登録会員数は現在8万7000人以上に上ります。
例えば、ある母親がアプリで「今日の午後3時から6時までうちの子供を預かってほしい」と発信します。子供の預かりなどは、事前にその母親(保護者)の顔見知りの人しか、アプリの中でつながれない認証システムになっているので、同じく登録している母親の顔見知りの人だけに、さらにその中で指定できるので、その人たちだけに、発信が届く仕組みになっています。子供の預かり関係で当社に手数料などの支払いは一切発生しませんが、当社では預かってもらう謝礼金として、当事者の間で1時間当たり500円程度を推奨しています。
具体的なやり取りは当事者の間で決めてもらっています。アプリ「子育てシェア」は、子供の預かりや塾などの送迎以外にも、モノの貸し借り、食事や外出、引っ越しの手伝い、買い物代行などなど、いろいろな使い方ができます。
自治体や地元の有名商業施設を展開する企業グループが当社と協力しており、収益は自治体や企業から得ています。自治体では、これまでに奈良県生駒市や三重県鳥羽市、神奈川県箱根町などと協力しています。
私は30代ぐらいまでは、キャリア志向が強い会社員でした。キャリアを高めさえすれば、経済的にも時間的にも楽になれるんじゃないかと思っていました。それで当時は幼い子供を抱えて、家事も育児も仕事も目いっぱいやっているような状態でした。
お金があっても豊かじゃない
しかし、ある時に、なんでここまで1人で背負い込んで頑張らないといけないのかと思いました。こんな社会を自分の子供は引き継がないといけないのかと。お金があっても豊かじゃないという価値観の転換が起きた時期でした。それがこのサービス、会社を作ろうと思ったきっかけです。
“ママ友”は、おそらくほとんどの人がSNSでグループを作っていますよね。それならば、そういうツールを使って地域の“共助”や地域創生みたいなことができないかと考えました。
創業当初、そうした事業は成功しないとよくいわれました。私は絶対に必要なサービスだと考えていたので、やりながら考えるというような状態で起業しました。そうした事情から最初は自己資本だけでスタート。そのうち投資してくれる人が徐々に出てきたという感じです。
今後は海外展開、例えば、アメリカでこのサービスができないかと考えています。日本とアメリカとでは社会が違う部分が多いと思いますが、企業にこのサービスを導入してもらい、従業員同士でアプリを利用するとか。これがうまくいけば、アメリカと日本で同時並行的に広めていければいいなと思っています。
企業概要
事業内容:ソーシャルネットワークシステムの設計、運用。イベント・マーケティングの企画・コンサルティング
本社所在地:横浜市
設立:2009年11月
資本金:700万円
従業員数:13人
週刊エコノミスト2023年10月31日号掲載
甲田恵子 AsMama代表取締役CEO 子育てアプリで誰も一人にしない